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察人姫-第壱話-

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「お久しぶりです、浅蔵先輩」
「おう、会うのは一年ぶりか。大きく……あんま変わってないか」
「それは言わないでくださいよ……」
「ははっ、悪い悪い」
 観客席で再会の挨拶を交わすユーイチとアタル。
 ユーイチとソラが一人暮らしを始めるまでは常に尊敬するユーイチにくっついていたアタルだったが、近頃はあまり会っていない。そのせいか人の後ろをついて歩くといったタイプであったアタルは自立し、それどころか生徒会長になるほどのリーダーシップを身につけていた。
「アタルー、ユーイチー、私を無視しないでよー」
「……浅蔵先輩はそろそろ就職活動ですか?」
「まあな、あと半年もすれば忙しくなる」
 そんな二人の間に入ることのできないソラは拗ねたように言うが、これも無視される。
「アタルー、お姉ちゃんを無視しないでよー」
「……離れてよ」
「あれ?マジ怒り?」
 ついにはアタルに寄りかかるソラだったが、アタルの冷めた視線に苦笑いを浮かべたまま固まってしまう。
「あの……もしかしてだけど…………アタルって私のこと嫌い?」
「うん」
「即答!?」
「もう帰ってくれない?」
「まさかの追い討ち!?」
「ははっ、相変わらず仲良いな」
 ユーイチにとっては慣れたやり取りが続く。
 弟のことが大好きなソラと、そんな姉を鬱陶しく思うアタル。
 けれど決して本心から嫌いなわけではない。
 それが佐伯姉弟の関係だった。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司