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僕の村は釣り日和8~鬼女沢

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 小野さんの背後に回り、細かく指示を出す。そのうち、焦れったくなって手が伸びた。
 小野さんと一緒に竿を握る。心臓の鼓動がまた高鳴った。竿の素材はカーボンという繊維でできている。カーボンは電気を非常に通しやすい。いつか先生が「人間の体の中にも電気が流れている」と言っていた。だとしたら、僕の心臓の鼓動も小野さんに伝わっているだろうか。
 ウキがクッと水中に沈んだ。二人は息を合わせたかのように、竿を立てる。生命の振動が竿に伝わった。
 川面から抜き上げられた銀色は、小野さんの手のひらに収まった。15センチ程の雄のオイカワだった。
「オイカワの雄だよ」
「へえー、よく雄と雌の区別がつくわね」
「オイカワの雄は尻ビレが大きいのさ。産卵の時期になると綺麗な色になるよ」
「これはメダカを食べない?」
 小野さんが不安げな表情で、僕の顔を覗く。
「大丈夫。食べないよ」
「よかった。じゃあ、うちの水槽で飼おうかな」
 小野さんが無邪気に笑った。僕はその笑顔に気をよくしてサシを付け直す。
 陽はだいぶ傾きかけていた。夕映えの中に、長い竿がしなった。