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男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)

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泉のほとりで倒れていたお姫様アイ。
その時、確かにアイの目を醒まさせるために、水を口から口へと含ませた。 

その時とはまったく違った情感を持って、次にジュンは唇を重ね合わせていく。

あの時卒倒していたアイは、人形のように全く無反応だった。
しかし、今回はまったく違う。

ジュンの唇がアイの唇に触れると同時に、アイは女の愛欲を炸裂させた。
ジュンの唇を力強く吸い込んでくるのだ。

ジュンにとって、こんな経験は初めて。
これには驚いた。 

しかしジュンも、もういきり立つ欲情を抑えることができない。
男の色欲に、火が点いてしまったのだ。

一方、アイの方は、すべてが女の企みの内のことなのだろうか、心地よさそうに酔っている。 
そして、しばらく仄かな官能の境地を楽しんだ後、さらに女の愛欲を燃やしてくる。

奥深い森に、神秘に静まりかえり、いつも清冽な清水を湧き出させている泉がある。
遠くの方からは、蒼い月に吠える狼の遠吠えが聞こえてくる。

そんな泉のほとりにある木こり、ジュンの陋屋で事は起こってしまった。

幽暗な月光に包まれながら、ジュンとアイは深く深く、そして幾度も幾度も、身体を重ね合わせるのだった。

それは、森に雷が落ち、赤々と森が燃え尽くされていくように。
二人はまさに激しく燃焼し尽くした。

それはまるで、遂に若い男女がその色欲の堰を切らし、めくるめく愛欲の極楽に登りつめて行ってしまったかのようでもある。

そして今二人は、その激烈な炎上の果てに、魂を抜かれたかのように寄り添って横たわっている。

月が陰った闇の中で、ジュンはアイの湿りを持った長い髪を優しく撫でた。
そしてジュンはアイの頬にそっと触れた。

「これほどまでに甘美な世界があったのか・・・・・・もう絶対、アイを放さないぞ」

肌に残った熱を感じながら、ジュンはそんなことを強く思った。