男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)
アイのあの瑞々(みずみず)しい肌。
そう、それが消えてしまっている。
そんなジュンの驚きに、アイは感付いたのか申し訳なさそうに話してくる。
「ごめんなさい、私ずっと水を飲んでいないとね、このように肌がカサカサになってしまうのよ」
ジュンは、こんなお姫様アイの秘密を知って、どう答え返して良いのかわからない。
「そうなの、じゃ、この泉の水をたっぷり飲んで下さい」
「ジュン、ありがとう、頂くわ」
アイはそう言って、ゴクリゴクリと一気に飲み干した。
すると摩訶不思議。
アイの肌は見る見る内に若さを取り戻し、しっとりとした元の瑞々しい肌に戻ったのだ。
「これ絶対に秘密よ、黙っていてね。こうして水を飲み続けていないと、若い私はいなくなるの」
アイは悲しそうな顔をして、そう呟いた。
「そうなの、だけど、今とてもお綺麗ですよ」
ジュンは励ますように返した。
それを受けてかどうかはわからないが、
アイは突然、耳を疑うようなことを口にするのだ。
「じゃジュン、今日のお礼よ・・・・・・今の私を抱いて」
ジュンはこんな言葉を聞いて、戦(おのの)きたじろいだ。
そもそも森の貧乏な木こりがお姫様を抱くなんてあり得ないこと。
そして、ジュンはどうすれば良いものかと戸惑って、俯いたままでいる。
作品名:男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず) 作家名:鮎風 遊