男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)
アイは、泉のほとりにジュンを葬った。
そして、小さな一本の墓標を建てた。
「私はイケナイお姫様よ、だけどジュンを想い零した一粒の涙で、幸運にもこの森の泉を変若水の泉に変えることができたわ。
これを飲み続けていさえすれば、幾千万年、永遠の若い命を手に入れたことになるのよね。
だから約束した通り、ずっとずっとジュンのそばにいてあげる」
アイの覚悟はもう決まっていた。
そして、最後の言葉を墓標に語った。
「ジュン、私、現世よりも・・・この青い泉の中で生きて行くわ。
変若水に全身を預けてしまった方が・・・・・・絶体に確実でしょ。
だって、いつまでも瑞々しいお肌で、もっともっと若々しくって・・・
ジュンのために、綺麗でいられそうだもの」
その後、アイは森の泉、その青々とした変若水の中へとゆっくり入っていった。
そして、その泉の底深く、
いつまでも若くて美しくありたいと願う一途な欲で、自らの身を沈めていくのだった。
作品名:男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず) 作家名:鮎風 遊