男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)
今も森の奥深くに、清澄(せいちょう)な青い泉がある。
それはいつも、こんこんと湧き出る清冽(せいれつ)な清水を、満々と湛えている。
そして辺り一帯は静まりかえり、何か神懸かり的な雰囲気さえある。
そんな泉のほとりに、一本の墓標が建っていると言う。
森の夜は早く更(ふ)けていく。
月光の柔らかな輝きが、泉を仄かに浮き上がらせる。
そして、奥深い森の遙か向こうから、その森の静寂を破り、狼の遠吠えが聞こえてくる。
そんな真夜中になると、森の青い泉から肌の艶やかな美しい姫が現れて、その墓標に巻き付いていると言う。
そして、こんな囁きが聞こえてくると言うのだ。
「ねえ、ジュン、5つの欲の最後の欲、その睡眠欲に負けてしまったのよね。
だけど、もうそろそろ目を醒まして頂戴。
私達・・・ジュン・アイ(純愛)だけど、
あの一夜の愛欲の絡まりのように・・・激しく、
そして淫靡に、私を抱いて。
だって、私、目一杯に ・・・ 変若(おち)てしまったのよ」
おわり
作品名:男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず) 作家名:鮎風 遊