男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)
ジュンは変若水(おちみず)の入った竹筒を落とさないように、大事に身に付けて、アイが待つ森へと急いだ。
もちろんその途中、行きの道中より、もっと容赦のない様々な誘惑があった。
しかしジュンは負けなかった。
すべてを振り切って、アイの元へと突き進んだ。
そして、やっと森の泉のほとりへと戻ってきたのだ。
変若水の泉のように青くはないが、以前と少しも変わらない、いつも通りの美しい泉がそこにあった。
「おお、遂に戻ってきたか、ヤッター!」
ジュンはそう叫びながら、どーんと泉のほとりに腰を下ろした。
「だけど・・・・・・あ~あ、ちょっと疲れたなあ」
ジュンは溜息混じりの呟きを洩らした。
それもそのはず、充分に睡眠が取れない強行軍だった。
逞(たくま)しい青年のジュンであったとしても、やはり体力的に限界。
疲れ果ててる。
その上に、ここへ戻ってきてほっと安堵感が・・・。
「ふー」と、ジュンは大きく息を吐いた。
そしてその後、それは音もたてずに、忍び寄ってきた。
じわり・・・じわりと。
それがジュンに襲い掛かってきたのだ。
そう ・・・ 『睡魔』が。
作品名:男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず) 作家名:鮎風 遊