男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)
しかし、ジュンは踏ん張った。
アイとの約束を果たすことが、最優先。
「いや結構です、私は行かなければなりません」
ジュンはこう暇(いとま)を告げ、寺を飛び出した。
そして山越えをするために、より高い所を目指し登って行く。
その途中、髑髏(どくろ)がそこら中に転がっている。
虎は死して皮を留め、人は死して名を残す。
いや違う。
その名の代わりに、結局は髑髏なのかも知れない。
この寺で、名誉に目が眩んで修行をした男達。
彼らが全部髑髏となって転がっている。
それはまるで名誉欲の残骸のようにも見える。
ジュンは後ろを振り返ってみた。
すると大きな大蛇が岩に巻き付いて、髑髏をしっかりとくわえ込んでいるではないか。
「ふー、もうちょっとで大蛇に飲み込まれるところだったのか、危ない危ない」
ジュンは心底ぞーとするのだった。
作品名:男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず) 作家名:鮎風 遊