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男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)

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ジュンは古狸の御殿から逃げるようにして、頂上近くまで登ってきた。
そしてそこには、敬虔な信者が集まって来そうな寺があった。

ジュンはその寺で、一泊の宿泊を願い出た。

「どうぞ、お入り下さい」
目つきの悪い坊さんが引き受けてくれた。

夜も更けて、その坊さんがジュンの部屋を訪ねてきた。
そしてその坊さんは、ジュンの前に座り込み、じっと見据えて言うのだ。

「ようここまで辿り着かれた、ここでほんの少し修行を積めば、世界の生殺与奪(せいさつよだつ)の権力を得ることができまする。

その結果、俗世界の人間どもから崇められ、最高の名誉を手中に収めることができるぞえ。

どうだ、これ欲しいだろうが」

ジュンは、ここまでの道中、色欲・飲食欲・財欲、これら3つの欲に耐えてここまでやってきた。

しかし、ここではほんの少しの修行で、人間界への生殺与奪の権力を得て、好き放題に世界を動かし、人民から崇められる名誉を手中に収めることができると言う。
ジュンの心がグラグラっと揺れる。

「ほっほー、男の一生涯、最後に一番欲しいものは名誉。うーん、それが手に入るのか、魅力だなあ」

最高の名誉ともなれば、人の世界で永遠に名が残り、語り継がれていく。
ジュンは、自分の人生、生きた証として何かを残したい。

人間界の生殺与奪の権力が手に入り、その結果、最高の名誉を手にすることができるとならば、考えてみる価値は充分にある。

正直、なんと魅力なことかと思った。