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男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)

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「おー、これぞ・・・酒池肉林の極みか!」
ジュンは圧倒され、茫然と眺めるしかない。

クラクラする妖艶さ。
滅茶苦茶官能的な妖女達。

「おっおー、自分を失いそうだ」

しかし、まだこの旅に出て、今日は初日。 
アイのために、若返りの水を持ち帰らなければならない。
最初の夜から、こんな色欲・飲食欲に翻弄されているようでは、これから先が思いやられる。

ジュンはぐっと辛抱した。

真夜中ではあったが、さっさと寝袋をたたんで身支度をする。 
そして、こんな艶(なま)めかしい酒池肉林に溺れず、なんとかその場から抜け出した。

ジュンはしばらく走り、そして後ろを振り返ってみる。
するとまさに驚きだ。 

森の卑猥(ひわい)な牝狐(めぎつね)たちが、火を焚き、捕まえた獲物の肉を炙り、それらに食らい付きながら踊り狂っているではないか。

「そうだったのか、あの情欲をかき立てられる女達は全部牝狐だったのか、

そして、あの皿に盛り付けられた肉は、この世界に落ちた男達の人肉だったのだ。ああ恐ろしや恐ろしや」

ジュンは今悪寒が走り、胸を撫で下ろした。
そして、はたと気付くのだ。

昨夜のあのアイとの激しい交わり。
牝狐を超える淫靡(いんび)な愛為。
もしその愛の交歓がなかったら、もうここで牝狐達の餌食になっていたかも知れないと。

そして、ジュンはぼそぼそと一人呟く。
「そうか、あれはこの俺が、この旅の初日に出会う色欲絡みの酒池肉林、
その難関をまず乗り越えさせるための、アイの策略だったんだよ・・・きっと」