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舞うが如く 第七章 7~9

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 「今回のことは、フランス人の手違いで、
 僕は知らなかったことの一件です。
 これから、おいおいと都合つけていきますので、
 もうちょっとだけの辛抱をお願いします。」


 と、汗だくになりながら釈明をしました。
このいきさつが民子を通じて、一同に伝達されたため、
今回に限ってという条件付きで、なんとかその場がおさまりました。




 その数日たった後のことでした。


 指導員たちが、まゆ選別場にやってきて
前橋の工女7,8人を、次々に指でさすと着いてくるようにと合図をします。
選ばれた工女たちは、うれしくて満面に笑みを浮かべました。
その日と、その翌日のまゆ選別場では一日中、この指名が繰り返されました。
ようやくにして全員が、無事に繰糸場へ入ることができました。



 繰糸場で、最初に教わる仕事は、”糸揚げ”と呼ばれる作業です。
まゆから引き出されて、六角形の小枠に巻かれた生糸を、
もう一度巻きなおすための作業です。
生糸は濡れたままにしておくと、まゆ成分のうちのニカワ質が、
枠にくっついてしまうため、小枠から生糸を乾燥させながら引き上げながら、
大枠にもう一度、巻き直すという作業です。



 巻きなおされた生糸のひとくくりが、完成をした商品となります。
この一連の工程のことが”糸揚げ”とよばれる作業です。
なお、まゆから糸を引き出して、その数本をよりあわせながら
生糸として小枠に巻くまでの前工程のことは、
”糸とり”と呼ばれています。


 品質に大きな影響をおよぼすこの”糸とり”は、
ベテランの年長者たちが担当をします。
その後工程の”糸揚げ”は、年少の12歳~15歳くらいの者が、
主に担当をしています。



 しかし新入りの民子たちは、
いくら年長者であっても、ここでは見習い仕事から始めなければなりません。
本工女となるためには、沢山ある仕事と工程のうち、この”糸あげ”から
まずはタートすることになるのです。