舞うが如く 第七章 7~9
舞うが如く 第七章
(8)ただの、手違い
昼休みの汽笛が鳴ったあと、
前橋出身者たちは琴の部屋に集まりました。
昼食も食べずに、ただくやしがっては涙にくれるばかりでした。
たまたま通りかかった琴が、
気配に気がついて部屋へ入ってきます。
管理職付きの見習いとして、
諸事と会計帳簿係として別行動中の琴でした。
一同を眺めまわして、どうかしたのかと尋ねます。
かくかくしかじかと、説明を聞いた琴が
思案顔のままに、とりあえず一同を諌めました。
「よくよく事情は調べてみますゆえ、まずは、私にお任せください。
それよりも、みなさんは、
ここは機嫌を直して、気持ちよく持ち場にお戻りください。
泣いているだけでは、何事も解決はいたしませぬ、
まずは、しっかりと食事をしたうえで、事の解決に臨みましょう。
いくさの前には、腹ごしらえも大切です。
民子さん、みなさんには、
しっかりと食事をさせください。」
それだけ言うと、琴が部屋を後にします。
残された一同が最年長の民子へ、一斉にその視線を集めました。
「泣いているだけでは、
確かに、何も解決などはいたしませぬ。
ここは、琴様に一任をして、まずは午後の汽笛と共に、
職場に復帰をいたしましょう。」
その翌日、琴が、
約束がちがうことで、担当の高木指導員に詰め寄りました。
高木指導員は、その気迫にうろたえます。
作品名:舞うが如く 第七章 7~9 作家名:落合順平