OATH~未来につなぐシルベ~第一章(第7話・第8話(前半)
■築城都市マノーラ 市政運営所2F 民衆自警集団ジャスティス マノーラ支部前<シーンNo.7-8>
中へ入ると受付には、レイナの父親であり、ジャスティス支部長兼マノーラ市長―バーク・ムートが彼らに背を向けて待っていた。
リディア「バーク支部長!」
リディアの声に反応し、彼らを見つめるバーク。
フェレル「遅くなってしまい、申し訳ないです」
バーク「いや、いい。無事に帰ってきてくれて何よりだ。それで任務は・・・・・・ふむ、聞くまでもないか」
リディア達の後ろにいるレイナを見つめるバーク。
リディア「ほら、レイナ」
後ろにいるレイナの背中を押すリディア。
レイナは恐る恐るリディアたちの前へと歩き、父親と対面する。
レイナ「(自信なさそうに)と、父さん・・・・・・」
バーク「まったく・・・・・・心配かけて・・・・・・よかった、無事で」
レイナ「ご、ごめんなさい。でも、わたし、どうしても・・・・・・!」
バーク「・・・・・・」
バーク、リディアたちに背中を向けながら、
バーク「だめだ!おまえを『ジャスティス』に入れるわけにはいかない!」
レイナ「な、なんで許してくれないの?理由を言ってよ!」
バーク「おまえのためだ・・・・・・」
レイナ「おまえのためって・・・・・・答えになっていないわよ!わたしの人生はわたしが勝手に決める権利があるわ。なのに、どうして、他人に自分の人生を委(ゆだ)ねられなきゃならないのよ!」
バーク「・・・・・・」
バーク、黙りこむ。
二人に言い争いにリディアが割って入る。
リディア「(必死そうに)バーク支部長、答えてやってよ!なんで、そこまでしてレイナをここに残す必要があるの?親心からなのかもしれないけど、いくらなんでもレイナの人生まで決める権利はないわ!」
リディア、必死に訴えかける。
その訴えが届いたのか、バークは話を進める。
バーク「・・・・・・これもレイナ、おまえが平穏に暮らせるようにするためだ・・・・・・」
レイナ「え?」
バーク、三人に背を向けながら、
バーク「母さんが亡き後、過激派による襲撃事件が発生し、ソヴェットを始めとする多くの者たちを犠牲にしてしまった。もうこれ以上、誰かが失うのは見たくないんだ。ましてや実の娘ならなおさらだ・・・・・・」
リディア「あ・・・・・・」
フェレル「・・・・・・」
レイナ「・・・・・・」
三人は彼もまた、『襲撃事件』という名の呪縛から解放されていないことを知り、言葉が出ない。
リディア「そんなことで・・・・・・」
バーク「なに?」
リディアを見つめるバーク。
リディア「そんなことで、夢を摘むのはやめて下さい!確かに、自分の周りが居なくなるのは悲しいことです!ですが、自分の為に相手を勝手に引きずりこむのも良くないわ!それも、相手の気持ちを考えずによ。そんなの、レイナが側にいれば気が済むという、ただの無い物強請(ねだ)りだわ!」
バーク「黙れ!おまえに何がわかる!?」
リディア「(必死に)分かりませんよ!実際に事件に巻き込まれていないから!でもね、それこそレイナが貴方を遠ざける原因にすぎないわ!自分の殻に無理矢理引きずりこむというその行為が!彼女には彼女なりの幸せがある。親なら・・・・・・娘が決めた未来のために、支えてあげるのが務めじゃないの!?」
バーク「・・・・・・」
バーク、再び黙り込む。
レイナ「父さん・・・・・・」
バーク、彼らに背中を向けて、
バーク「帰ってくれ・・・・・・」
フェレル「え?」
バーク「(怒ったように)今日は帰ってくれ!」
レイナ「・・・・・・」
バークの悲しそうな背中を静かに見つめる3人。
三人はジャスティス支部から出ていく。
三人が出て行ったあと、バークは寂しそうにつぶやく。
バーク「分かっている・・・・・・分かっては、いるんだ・・・・・・」
※ここでイベント終了。そのまま「築城都市マノーラ 市政運営所前」へ進む。
■築城都市マノーラ 市政運営所前<シーンNo.7-9>
夕方。
夕日が市政運営所の窓ガラスを輝かせている。
市政運営所前にいる三人。
リディア「ふぅ~まさか、頑固支部長までも襲撃事件のことを引きずっていたなんてね・・・・・・」
フェレル「まあ、大事な人が次々と自分の周りで失うのを見てしまうと、離れていくことも『死』へと向かうも当然と思ってしまうんだろうな。ちょっと大げさだけど・・・・・・」
レイナ「父さん・・・・・・」
父親の気持ちを知り、落ち込んでいるレイナ。
リディア「(レイナを見ながら)大丈夫。あんたの親父は、ホントはそうじゃいけないと思っているわよ。ただ、自分のなかで決着がついていないだけだわ」
フェレル「ああ。レイナ、後もうひと押しだ。また明日、支部長と真正面から気持ちをぶつけて見ようぜ。自分から『心』を開けば、大丈夫さ」
レイナ「フェイさん・・・・・・はい。もう一度話してみます」
レイナ、コクンと頷(うなづ)く。
リディア「それじゃあ、あたしたちは宿屋で一泊するから、これを支部長に渡しといて」
フェレル「おお、そう言えばそうだったな」
二人はレイナに手帳を渡す。
レイナ「分かりました」
フェレル「また、明日な」
リディアとフェレルはレイナに向かって右手を挙げる。
レイナも右手を挙げて、
レイナ「はい、また明日」
二人を見届けるレイナ。
レイナ「よし、もう一度説得しないとね」
レイナは気合を入れて、市政運営所へと戻る。
※イベント終了。このまま『ムート邸』のイベントへ進む。
■築城都市マノーラ ムート邸1階 書斎<シーンNo.7-10>
夜。
マノーラの市政運営所の真後ろにある、大きな豪邸『ムート邸』
その1階の書斎で、バークは本を読んでいる。
バーク「ふう~」
バークはため息をつきながら本を閉じ、いつも整備されている庭を眺める。
バーク「レイナ・・・・・・」
それを寂しそうに見つめるバーク。
ソヴェットの言葉を思い出すバーク。
※民衆自警集団『ジャスティス』マノーラ支部で、ソヴェット(当時30歳)がバークに訴えている絵を表示。
ソヴェット「レイナは世界を回りたがっている。彼女はまだ若いし、自由にできる時は今しかない。彼女がこの道に興味あるかないかは別にして、彼女の思う通りに世界を見つめるべきだ!自分の思いだけで強要しては、ますます彼女が遠ざかるだけです!!(必死に訴えているように)親子の『絆』を信じてくださいよ!例え離れていても、ここまで一緒に生きた過程、時間は一生もののはずだ。この『絆』は、お互い離れても消えるはずはないです!!」
バーク、本を静かに閉じ、
バーク「・・・・・・」
閉じた本を机に軽くトンと置き、
バーク「そうだな、ソヴェット・・・・・・今こそ、巣立ちの時か」
バークは目を瞑り、覚悟を決める。
※イベント終了。このまま『築城都市マノーラ 市政運営所2F ジャスティス支部』へ続く。
作品名:OATH~未来につなぐシルベ~第一章(第7話・第8話(前半) 作家名:永山あゆむ