ゆびきり
おかしい。DVDの売り場には数人の人影しかない。ひと組のカップルと、老人と孫らしい小学校低学年らしい女の子。おたく系の若い男がひとり。
「こちらも早めに来てるよ。
菜奈ちゃんの姿はすぐに判る筈なのに。
今日の服装を教えて頂けますか?」
「なんとなく不安。
時計台の下に居る人は少ないのに、
どうしてきよしさんが発見できないのかな?」
中野はエレベーターまで走り、地上に出てから駅に繋がる広場を走って行った。野外ステージでギターを弾きながら若い女が歌っている。聴衆の手拍子も聞こえる。その横を走った。
一時間後、彼は諦めた。あの指切りのあとは全て嘘だった。冷静になって過去のメールを読みなおしてみた。使われている単語や、送り仮名などの癖を調べてみると、同一人物のメールではないと思える変化が、時期によって感じられた。発病、入院の話も、出鱈目だったのだろう。少しは疑っていたが、結局騙されて多くのポイントを買わされてしまった。