ゆびきり
中野は菜奈がまた笑顔になったので、それ以上押し問答のようなことはやめようと思った。
「来週だね。今日は愉しかった。正直に云って逢えるとは思ってなかったし、こんなに幸せな気持ちになったことはないよ。ありがとう。一生忘れない」
そのときだった。ずっと握手をしていたのを離すと、菜奈の瞼から大粒の涙が溢れ出したのだった。
彼女はやはりサクラかも知れないと思っていた中野は、菜奈の涙を見るとつられて泣いてしまい、二人はそこで抱き合うことになり、そして間もなく、くちづけをした。
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昼食後は少し眠るので、真昼でも薄暗い首都高速道路の下まで来ることが多い。中野は十分余り眠ってから、携帯電話のディスプレーに出会い系サイトの画面を呼んだ。菜奈からのメールは、今日も届いていた。