ゆびきり
「不動産屋がいい加減だったの。あっ、お握り」
小皿にふたつ載せられて来た。
「ねえ、半分づつ食べましょ。そうすれば好きな方を必ず食べられるわよ」
「そんなことしたら夫婦だと思われるよ」
「そう思われたいのかもよ」
奈菜は顔を紅くした。
「こういうのも間接キスかな?」
お握りを食べながらそう云って笑ったのも彼女だった。
「どうしようモモちゃんを受け取りに行かないと」
そう云ってから菜奈は腕の時計を見て表情を急変させた。
「何よこれ!もうこんな時間じゃない!」
「急いで清算しますね」
中野は伝票を持って立ち上がった。費用は菜奈が半分払うと云うのを断り、
中野だけが負担することにした。
エレベーターの前には既にのんだらしい人たちが大勢いた。先の方は駄目だったので、あとの方に乗ったが、満員だった。
エレベーターを出てからふたりは手を繋いだ。あっと云う間に改札の前になった。