ゆびきり
「わたしも。思ってる。でも……自信がないの。一度失敗すると、臆病になってしまうのよね」
「相手が変われば大丈夫。菜奈さんとは相性がいいと思う。間違いない」
暫くの間沈黙となり、それでいて気まずくはないのが不思議だった。燗酒が来た。お銚子を中野が持って菜奈に勧め、傾けた瞬間に眼が回るような疲労を感じた。菜奈の杯から酒がこぼれた。
「ごめんなさい。徹夜明けの疲れが出たみたいです」
「明日も、お仕事なんですか?」
中野は笑って、
「明日は休みなんです。だから明日逢いたいって云ったんです」
「そうだったんですか。でも、明日は都合が悪くて……」
「でも、逢えたから、これ以上のことはありません……モモちゃん
は、どこかに預けてあるんでしたね」
中野は菜奈が可愛がっている猫のことを話題にした。
「実は、大家さんが今日の昼間猫が居ないことを確認するというので、友達のところで預かって貰っていたの。もう、引き取りに行かないと」
「最初からペットは禁止?」