結ばれて
「あちゃー。やっぱりザックッだね。ガンとしたからやばいと思ったけど。
ねえ誰かー、ドレッサーからコットン二、三枚持って来てー」
娘が取りに行き、持って行ったようだ。
リビングに戻ってきた妻を見た私は(愛する妻だー)心配の表情を全面に
醸(かも)し出していたに違いない。
妻は、額をコットンで押さえながら・・・笑った?
どうした?そこは心細く訴える目をするんだろう。
唇を結び、小さく二、三度頷き、納得したような顔つき。
「ちょっと、縫いに行くわ。手間かけるけど、医者連れて行って」
「ああ」私は完全に拍子抜け。
「ごめんね。びっくりしたよね、あの顔じゃあ。私は見えないからどうって
ことないけど、(クスクスクス)怖いよね。ホラーだよ」
「ど、どうなの?」
「あ、血は止めた。勿体無いから押さえて止血。たぶんもう止まったと思うけど、
縫ったほうが良さそう」
妻は近づく私にコットンを捲り「ねっ」と傷を見せた。
妻の言う通り、てっぺんからピューっと血は噴出さなかったが、血が止まったために
その傷口が痛々しく見えた。