結ばれて
一緒に居た娘が、普段は物静かな娘までもが叫んだのです。
「おかあさん!」
はたっと私は、平常心をリバース。女をもう一度よぉーく観察。
確かに娘の言うことは正しい。一ミリの間違いも見つけられない。
おー愛する妻だ!安堵。
いや待て。ならばどうした?
慌てふためく私の思考などお構い無しに、娘の直球発言。
「血が出てる」
「え?」妻は、片手の荷物を床に静かに置くと、額に触れた。
「あっ、切れてる」何とも感情の欠片すらない。
荷物と一緒に床に置いてしまったのか、もしそうなら早く拾い上げろ。
見つからなければ一緒に探してやるぞ。
妻は、もう片手の荷物を床に置くと洗面所へと足を向けた。
「あらら、見ぃーてこよ!」おい、スキップまでするのか?
私は、テレビを付けたまま、妻の声を聞き分ける。
あーやっぱり聞きづらい。ボリュームを下げる。
(それなら『切』にすれば良かったのだが、まだ思考が乱れていたようだ)
きっと鏡に映った自分を見て悲鳴と狂乱の声を発するだろう。
そこで私が登場だ。
貧血さながらの妻をこの太目の腕でしかと受け止め、「しっかりせよ。私はここに居る」と
勇気付ける。うんそうだ。夫なんだから当然!
洗面所から妻の声が聞こえた。・・・あれ?