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リビングに妻が現れた。
いや、気持ちを落ち着け、言い直そう。
リビングに妻らしき女が現れた。
私は、買い物へ出かけた妻だと思い、テレビから顔を上げ「お疲れ」の声でも掛けようと
振り返った瞬間、違うものを見てしまった。
確かに出かけた時の妻の服装だが、今、目の前に居るコレはなんだ。
その女は、顔の半面を赤く染め、息を切らし、微笑んでいる。

確かに背格好も妻に似ているが、二十数年前にひと目惚れ同然に好きになり、
苦手な台詞をさりげなく、しかもぼそっと呟き、この腕に抱きしめるまでの関係にこぎつけ、県外から親を呼びつけ、彼女の厳格そうな父上に私の父が少々遠慮がちな態度で
私の代弁をし、まあなんとかこうとか結婚をして現在まで山あり谷あり。
平坦で長―い道だったり、分かれ道で強引に手を引き歩んできたりと
私にとっては、苦楽をともにしてきた愛すべき妻とは……（はぁー）
あ、失礼。あまりに一気に説明をしたので脳酸素不足になりかけました。
……別人のような形相。