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舞うが如く 第七章 1~3

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舞うが如く 第七章
(3)民子の決意


 父が申すには、


 「さてこの度。お国の為に、
 その方を、富岡御製糸場へ遣わすについては、能よく身を慎み、
 国の名家の名を落さぬように、心を用うるよう心がけよ。
 入場後は、諸事心を尽して習い、他日この地に製糸場が出来たおりには、
 差し支えなどの無きように、良く仕事を覚えて候う。
 かりそめにも、業を怠るようのことなすまじく、
 一心にはげみまするよう 気を付くべく」



 と厳しく申し渡されました。
次には母が、このようにも申します。



 「この度お前を遠方へ手放して遣わすからには、
 常々の教えを能く守らねばならぬ。
 また男子方も沢山に居られるだろうから、
 万一身を持ちくずすようなことがあっては、第一御先祖様へ
 対して申訳がない。
 また、父上や私の名を汚してはなりませぬ」



 と申しましたから、
私は毅然として、このように返答をいたしました。



 「母上様、決して御心配下さいますな。
 たとい男千人の中へ私一人入れられましても、
 手込めに 逢えばいざしらず、
 心さえ、たしかに持ち居りますれば、
 身を汚し御両親のお顔にさわるようなことは
 決して致しませぬ」


 と申しましたら、母が、



 「その一言でまことに安心した。
 必ず忘れぬように」 とも、重ねて申されました。


 一行の人々の両親も、皆このように申されたであろうと存じます。
と、長々と最初に口をひらいたのは、前橋藩の元家老の長女娘で、
民子となのる、歳年長参加の娘でした。