白の枯れ園と揺れる僕ら。
さぁ、第一試合は・・・あたしか。
まぁ諦めるか。多井先輩に勝とうだなんて思えるわけがない。
美人さんで、成績優秀、剣道もうまいとくれば……ねぇ。
さぁ面もつけましていざ死地へ。
審判は紅白の旗を持ち、審判をする。試合者は紅、白の印をつけて試合をする。
私は、白だ。
審判は三人、全員先生。
ギャグセンなまでの絶望感。
多井先輩のぺったんこなお胸を借りさせていただいて稽古しますか。
試合と思ったら負けだ。うん、きっとダメだ。
なぜか口には出してないのに多井先輩から殺気を感じます。
とりあえず、死なないようにしよう。
きっと多井先輩も竹刀で試合に出てくれればきっと死なないさ☆
白線に一歩踏み込めば、もうそこは戦場で、審判のやめがかからない限り
一瞬たりとも油断ができようものか。
相手と呼吸を合わせ礼をする。9歩の間合いと呼ばれる間から右足から3歩。
開始線にて蹲踞。よし、先輩の竹刀だから、生きて帰れる。
「はじめっ!!」
試合開始。保護者の方も数名は豚汁作りには行かず観戦して頂いてるようで。
拍手も上がるが、まぁここまで不利だと慰めに聞こえてくる。
てか先輩、後輩相手に目が本気なんですけど。怖いスよ~。
一足一刀と呼ばれる打ち間での睨み合い……じゃなくて一方的に睨まれてます。
多井先輩相手だし下がったら打つんだろうなぁ。
打突の好機、という言葉がある。簡単に言うと
「試合ではこう言うところがチャンスです」みたいなもので。
その中にも相手が下がったところ、というのは明記されている。
相手が蝦夷なら返し技で一発食らわして……なんてのもできるけど
多井先輩じゃ、ムリだ。さぁ、どうしようか?
「ヤァぁ―――ッ!」
あー、多井先輩怖いですってば。そんな気合い出さなくても負けますって。
基本稽古でも当たらないコテを敢えて大袈裟に打つ。
面打ちが基本スタイルなんで。いつもの試合ならコテ、面と行きたいところですが、
多井先輩が竹刀で面を防ごうとする、そこを。
「ドぉ――――ッ」
あ、外しちゃった♪てへっ……。すみません。
そのあと、振り返った瞬間。
「メぇーンッ!」
多井先輩の面がきれいに決まる。
紅の旗が三本上がった。
たしか今日は一本勝負にするって言ってたし、
あらー。終わっちゃった。開始線に戻り蹲踞、左足から小さく5歩下がる。試合場から出る。
よし、豚汁早く食べたいなぁ
作品名:白の枯れ園と揺れる僕ら。 作家名:成瀬 桜