白の枯れ園と揺れる僕ら。
保護者の方々へ、
そして先生方へのお茶出しの準備のために
一旦礼をして、道場の外へ出る。
裸足の足先から体の熱が奪われていく。
ベンチコートを羽織って、
部室に置きっぱなしにしているルームソックスを
先生たちに見られたら
いやだな―とか思いながら履く。
今日この頃は、あまり雪が降らないこの町でも雪が降り続いている。
灯油ヒーターが部活の時はフル稼働している。
こんなに去年は寒くなかったと先輩たちは言っていた。
特に今日はいつもより、格段に寒い。
風がナイフが刺さるかのようにキツく突き刺さる。
―――今日は何となく、嫌な予感がする。
剣道場の雰囲気がなんだか暗くて、重い。
みんないつも通りで何も変わらないのに、何かが違う。
西篠先輩は相変わらず少し高飛車に怒っている。
でも、なんとなく寂しそうな感じはする。
今、西篠先輩は「嫌われ役」を買って出て苦しんでいるように見える。
自分もへとへとになるほど辛い稽古内容を自ら提示して。
嫌がられるのも半分無視して、突き進んでる。
山神先輩は自分でもわからないくらいのところで
西篠先輩のことを気にかけてても、批判して、嫌がって。
でも、なんやかんやで誰よりも剣道には真面目に取り組んでいる。
けど、そこまではきっと笠間達は考えてもいない。
私でも憶測にすぎない。
作品名:白の枯れ園と揺れる僕ら。 作家名:成瀬 桜