舞うが如く 第六章 13~16
「そういえば、琴どのの故郷、
上州には、官営の生糸工場が出来たそうでありますぞ。
蒸気と器械で糸繰りをするそうですが、
なんと世界いちを誇る最新の技術にあるようです。
ここの松ヶ丘の開墾場からも、
昨年より、幾人もの女子たちが技術習得のために、
そちらへ派遣された模様でもある。」
「生糸を、
繭より取りだす方法が
機械によってできるようになるのですか!」
「外国人が講師となり、
全国より模範工女を育てるために、
おおくの女子たちを受け入れているそうである。
聞いた話ではあるが、
なんでも最新式の西洋の器械を使えば、生糸を簡単に
大量に生産できるようになるという話である。」
「ずいぶんと、近代的なのですね」
「それが、新政府の言う、文明開化であろう。
米の生産技術は、国内を豊かにするが、それ以上のものにはありえない。
生糸は昔より我が国の誇る、貿易の宝物とも言えるものだ。
大量に造ることが、国の力にもなるという。
ここの松ヶ丘にも、やがて洋風の技術を取り入れた、
生糸の製糸工場がいくつも建つことになろう。
米は、わが身を守るものであるが
生糸は、この国の行く末を豊かにするために
是非ともに必要な物になるのであろう。
まことに、大地からは色々な物が育つものである。
不思議な力がたくさんあるのう・・・
この大地には。」
作品名:舞うが如く 第六章 13~16 作家名:落合順平