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舞うが如く 第六章 13~16

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舞うが如く 第六章
(14)酒田の監舎


 
9月11日の早朝。

 ワッパ騒動の拡大を恐れた県は、
指導者の白幡や、金井兄弟らをはじめとする主だった者、
100人余りを、一斉に検挙してしまいました。


 さらに暴動化する危険性に備えて、
松ヶ丘開墾場の全士族3000人に対して、武装を準備する指令が出されます。
おのおのが武具の手入れに専念します。
さらに次の指令があれば、一気に馳せ参じる態勢が整いました。



 明けた12日になると、
村々の戸長宅には、警備にあたる警官たちも配置されます。
それらの上部組織に当たる郡の役所や県庁舎には、
選び向かれた精鋭たちが銃を手にして配備をされました。

 しかし農民たちの怒りは、一向に収まる気配を見せません。
各部落ごとに、日暮れと共に集会が開かれ、松明を掲げて多くの農民たちが
次々と群れ集いはじめました。




 14日になると、県より松ヶ丘の全士族に対し、
主要な県庁組織の警備にあたれという、総動員指令が伝えられました。
この同じ日に、各村々でも農民たちの総決起の準備が整いました。
農民たちは手に鎌や棒、飯と松明などを準備して
各地ごとに、続々とその集結をはじめました。



 当初の予定通り、目標を指導者たちが収容されている
酒田監舎と定めて、筵旗(むしろはた)を先頭におしたてながら、
第一陣がその行軍を開始しました。



 部落を通過するたびに、その人数が増え続けます。



 その数はとどまる事を知らずに、ついに、
数百から、数千人へと膨れ上がり、やがて1万人を越えてしまいます。
この人数になった頃から、道中にて食い止める手立ては不可と見て、
県は防衛部隊を、急きょ酒田監舎のみに集中をさせるようになりました。
武装した警官隊が、酒田監舎を取り巻いて最前線の防衛にあたり、
松ヶ丘の士族たち3000人が、その後方支援へと走ります。



 夜を徹して酒田監舎へと集結してきた農民の数は
すでに、その総数が一万5千人にまで到達をしていました。
さらに15日の夜明けと共に、装備を整えた第二陣の農民たちが
次々と酒田へ向かってその行進を開始しています。



 うねりのように押し寄せてきた農民たちと、
監舎前で防衛線を張る警官隊との間で、緊張感が走ります。