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てっしゅう
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「哀の川」 第十五章 杏子の変化

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「純一・・・あなたと私がお互いにもっと近い年齢で、結婚も出来るような頃だったらどんなに良かっただろう・・・って、この頃考えるの。こんな年なのに、若いあなたのことを好きになってゆくなんて、いけないことなんだともね。血のつながりは無いけど伯母だし。純一はこれから人生に希望と未来があるから、自分がやりたいと思うことに集中して頑張って欲しいわ。そのお手伝いなら、何でもするわ。だから、二人はこれ以上にはならないで、ずっと仲良しの伯母と甥の関係でいましょう。ね?そうしてくれない?」

心の奥にある今の気持ちとは違うことを話した。それが純一のためだし、いつか将来悲しい別れが来ることを考えたら、杏子は苦しみたくないと思うのだ。夫に浮気されて離婚したあの哀しみを二度と味わいたくないと恋愛を避けてきた自分だったが、今純粋な純一の気持ちに揺り動かされていることが嬉しくもあり、悲しくもあるのだ。捨てられる恋におぼれては惨めさを繰り返すだけだ。若い純一が年老いてゆく自分をずっと好きでいるわけは無い。それが、当たり前の感情だから。許されない愛でも、絶対といわれた愛でも、時間と老化は魔法を解かすおまじないのように、ある日突然消えてしまう悪夢が来るのだ。

「杏ちゃん、本当は僕のこと好きじゃないんだよね?僕が好きって言っているから可哀想で付き合ってくれていたんだ・・・なら、いいよ。杏ちゃんの嫌なことはボクはしないから。明日家に帰るよ」

ハッとして杏子は自分の言ったことが純一を傷つけたと感じた。純一はうつむいて泣き出した。もう、構わない・・・どうなっても構わない、杏子はこの時ほど純一が男として好きだという思いに駆られたことは無かった。終わりが来てもいい、今純一が好きと言ってくれている事に応えようと身体を強く寄せた。