掌編集【Silver Bullet】
「まあ、お菓子野郎がそういうのを考えるのが結構好きだったりするのが原因なんだがな。それを無理に物語にしようとするから、ちょっと変な感じになるんだ」
「まあ、その割りに結構アクセス数も多いんだよね。……タイトルかな?」
「タイトルだな」
「タイトルですね」
「この作品に関しては、『鏡よ鏡よ鏡さん』と並ぶタイトルの分かり易さ故か、この二つに際しては下品な話、群を抜いてる。まあ、一作目の『雨女に関する考察』が圧倒的ではあるけれど」
「その辺、どう考えてるんですか?」
「『よくわからん』だって。まあ、これは割りと登録タグとかも素直だったから、じわじわと伸びてるのもあるんだろうね」
「因みに、何でこんな内容になったのですか?」
「あのお菓子野郎が子供の頃、怪談の上に貞子テイストなナイスレディがいたらどうしよう。とか妄想したのが今回の話の根源になっているそうだよ。その辺は、作品紹介に書かれているね」
「ある意味では、一番ホラーらしい話ではあるんだが……」
「まあ、怪異によって人が死なないんだから、ホラーとしては欠陥だとは思う」
基本的にホラーの大原則として、自身の命が天秤に掛かっていることが大前提だ。故にスリルと恐怖感が現われるし、何より話が引き締まるのだ。
「その辺は結構悩んだらしく、それをどうにかしようとしたのが次の『うみぞこのくじら』だそうで」
まあ、大体思いつきで書いたのだろうけど、ここは悩んだということにしておこう。
「うみぞこのくじらって、普通に海底じゃダメなのか?」
「海底の鯨じゃ、かいていのくじらって読んじゃいそうだからって」
「あえてうみぞこにする意味は?」
「特にないんじゃない? あ、いや、今それに関する回答が来た。何々――『海底よりもうみぞこと表記した方が、この場合はおどろおどろしさが増すから』だとか。ほとんど気のせいの領域だね」
まあ、表現なんてそんなものなのだろう。
「で、このうみぞこのくじらってなんなの? 一応は最終回で解説されたけど」
「一番謎の多い存在だよね。そのせいか、お菓子野郎のお気に入りのキャラだって」
「キャラクターなのですか、アレ……」
「因みに、他のお気に入りは夏の怪物と抱き枕(仮)ちゃん抱き枕バージョンだそうです」
「私はっ! ツクモガミバージョンの立つ瀬はないのですかっ!」
うみぞこのくじらや夏の怪物にすら最終回で出番があったのに、彼女の場合は全くなかったよな。しかも、印象深い登場が抱き枕バージョン(首折れスタイル)なのだから、最早哀れだ。
「で、結局どういうことなんだよ、この話」
「『私』が眠ったまま死んでしまうという奇病に掛かったから、『M』が知り合いに頼んで解決してしまおうってことだね」
「まあ、そういうことなんだけど、結局『私』は何も覚えてないわけだから、話がややこしくなってんだよな」
「えーっと、登場キャラを整理するなら、『私』、『M』、『博物館の女の子』、『かずちゃん』かな?」
「ついでに『たださん』もいるよ。何気にたださんの初登場会だったりするんだぜ」
「え、あんたとたださん、知り合いなの?」
「設定上はな。ほとんど生かされてないわけだけど」
「えっと、その後、解説に書かれているには、『M』が『たださん』にこの件の解決を依頼して、その『たださん』が呼んだのが、『博物館の女の子』で、その女の子が魔法のような力で解決した』という……トンでもだなぁっ!」
「しかも『私』以外の視点では書かないという縛りがこの辺で顕著に現われた所為で余計に話が分かり辛くなってるな」
「変なこだわりの所為で話がぐっちゃぐちゃになるなんて。下の下です」
大人しく補足説明でもしておけばよいものを。
「えーっと、次。来たぞ問題作。神隠しの日」
「来ちゃったなぁ」
「来ちゃいましたね」
色々とはっちゃけた作品だったな。
「そりゃぁ、お菓子野郎の趣味が前面に押し出されたドロドロとした作品だからね」
「いつの間にきやがったっ!」
さわっちだった。
「ただでさえ会話が混沌としてきて誰が誰だか分からなくなってきたのに、お前が来たら尚更読者が混乱するじゃねぇか」
「そうと言わず、ほら、お土産」
そう言って、お酒を机の上に置いたさわっち。
「コレは良いものですねぇ……」
抱き枕(仮)ちゃんはそのお酒の封を切る。
「ちょっと待て、お前未成年じゃ……」
「つっこむのはやめよう。ツクモガミに成年も未成年もないよ」
それに、あのナリをして製造から一年と立っていない。生後半年で立って喋って鍋をお箸で突付く生き物を人間とは言わない。一休でもそこまではしなかった。
「で、趣味って何さ」
「えーっと、例えば『だ○ま』とか」
「「ろくでもねぇっ!」」
基本的にさわっちはお酒を飲みに来たのか、私たちのやりとりをにこにこと笑いながら酒を口にしている。
「子供がだ○まになるところなんか、悲壮感と未来のなさに濡れ濡れになるらしいよ?」
「最低ですぅっ! おまわりさんこっちですぅっ!」
「因みに、このまま死んでしまうのはBADらしい。あくまでその悲壮感と最低な人生の中でも明るく育ってゆく子供を描くまでが趣味らしい」
「そこまで聞くといい話っぽいがよく考えなくても趣味の悪い話だな」
「表向きだけは取り繕ってる感が強いです……」
「因みに、死んじゃうバージョンもあったようだよ」
「前言撤回っ! こいつほんまもんの悪魔だぁあっ!」
「私、今、強烈に寒気がしてます。そのうち私のワタが出てきてもおかしくないですぅ」
比喩でも暗喩でもなく、本当に綿だからなぁ。事実、そのうち破れて出てくるだろう。
「でもまあ、死んじゃうのはあんまりに最低な結末だからと言って、生き残ったそうだよ。あと、ここだけの話、四肢切断はあまりに可哀想だからと当初は右手と左足だけ残すつもりだったらしいんだけど、すっかり忘れて次の話ではだ○まなともちんを描写してしまっているのは御愛嬌」
「ともちんの九死に一生は、俺たちの活躍とは全く別のところにあったのか……。というか、そんなうっかりで半分残っていた手足までも奪われたともちんマジ可哀想。そしてお菓子野郎○ねよ」
「因みに、こんな滅茶苦茶ダークで血みどろどろな話だけど、微笑ましいシーンがあったりなかったりと言っているよ」
「どこさ?」
「えーっと、『さわっちとMの初顔合わせシーン』だって……どういうこと?」
「あー」
「……」
「……」
「ねぇ、どういうことさ」
「それはですねぇっ、むがぁっ!」
慌てて抱き枕(仮)ちゃんの口を塞ぐ両者。
「……ほらっ! さわっちっ! 結局お前はなんなのさっ! 『神様の企業努力』から気になってんだよなぁっ!」
「さぁっ! 『読者の想像にお任せします』としか言えないなぁっ!」
この二人のテンション、なんなのだろうか。いつになく気持ち悪いなぁ。
「ほらほら、次の話だっ! トリガーハッピークリスマスっ!」
尺の問題もあるし、確かにさっさと進んでしまおう。
「むがむが、ぷはぁっ! これは、クリスマスのお話ですね。タイトルのドヤ顔感が半端ないですね」
作品名:掌編集【Silver Bullet】 作家名:最中の中