掌編集【Silver Bullet】
「事実、結構気に入っているタイトルらしいよ。トリガーハッピーと、ハッピークリスマスを繋げて混沌感がいい感じに醸し出されているから好きなんだって」
「でもまあ、ドヤ顔でタイトルを打ち込んでるお菓子野郎と考えるとちょっとなぁ……」
「あの人、何だかんだでこーいうちょっと捻ったの好きだよね。で、周りの反応を期待する」
「本当に受動的で面倒な奴です」
登場人物にここまで扱き下ろされる原作者がかつてこれまでいたのだろうか。ある意味では、この作品ならでは、ではないだろうか。
「基本的にはこれら掌編の総集編と言う位置づけで、色々な複線とかの回収と風呂敷を畳んだのがこの作品だね」
「まあ、複線も後付の類だけどな」
「ついでに複線のようで実は複線じゃなかった表現とかキャラクターがいますよね」
それ、あんたのことだな。
「その辺は気をつけなきゃいけないな、と思っているところのようで、今後の課題だって言ってた」
「あいつの悪いところだよね。推敲もあんまりしないし」
おかげでさわっちは、トリガーハッピークリスマスに出てきたとしてもあんまり意味のないキャラだったしな。
「僕があそこにいた意味って、『クセになりそう』って呟いたぐらいにあったっけ?」
「ないな、全く」
「その辺はお菓子野郎も反省しているようで、色々と修正を企んでいるみたいだけど、上手くいっているのやら……」
「へぇ、そうなんだ。活躍するのかな?」
「まあ、これを書いている時点ではまだ本稿にほとんど手を付けていない状況だからね。どうなることやら」
「計画性のなさも甚だしいな……」
「で、この物語の問題は二つ。まず一つ目、妹さんとたださんって何者?」
「そりゃあ、ヤクザ寄りのシティハンターなんでしょ?」
「ここに来てまた変な要素を持ってきたよね……」
「兄弟でシティハンターなんて、これどっかで使おうとしたネタをそのまま流用しただけじゃないですか?」
「『ノーコメント』だそうです」
「図星だな」
「図星ですぅ」
「図星だよね」
「アマチュア小説だからって、好き勝手やりやがって」
「清清しいまでのクズですぅ」
「ずぼらだよねぇ、あいつ」
お前ら、あのお菓子野郎にどれほどまでの恨みがあるんだ。
「結末に至るまでも、かなりもたもたした展開だし、相変わらずの不思議ワールドもあるしで、中々にアレだよな」
「何より、色々放り投げた感があります。佐藤さんとか背広のおっちゃんとか、ただ出てきただけじゃないですか」
「佐藤さんの出演には全く意味がありませんでしたね」
「曰く、『削ります』の一言」
佐藤さん、存在すら削られるとは哀れだ。
「そういえば、みんな忘れてそうだけど、佐藤さんの他に下沢もいたな」
「いたなぁ、そんなの」
チラッと名前だけ出てきた『私』の友人その一。その名も下沢さん。
「結局なんだったんですか?」
「えーっと、『下沢と姓の付くキャラクターは総じてモブ』」
「つまり、アレは『私』と『M』の交友関係を端的に表現するために出てきた本当にモブなわけだね」
「続きが――『補足するなら、最中ワールドでは下沢という名前は高確率で死ぬキャラ。マク○スに置いてのバーミリオン小隊二番機のポジショニングぐらいの死亡フラグ。特に○○沢とあだ名が付くと信頼度アップ』だそうです」
「あだ名がないから、まだマシ、なんですか?」
「いや、あいつにはな、実はあだ名があるんだ」
「それって、どういう?」
「「――シモ沢」」
「「下沢さん逃げてぇぇぇぇえっ!」」
気の毒に、シモ沢……。
――ついでに、この一発ネタの為だけに仕込んでいたことをここに追記しておこう。もしかしたら一番不運なのはこのシモ沢なのかもしれない。
年末の夜空にキラキラと輝く友人の笑顔を幻視しながら、私は次の解説へと移る。
「さて、『今回の装填されていた弾丸が銀の弾丸だから生き残ったという結末に付いてですが』――」
「ああ、アレな。ちょっと感心したぜ」
「『科学的実証は全く成されておりません』」
「「マテやコラァァァァッ!!」」
「『また、防弾チョッキとは言えピンきりであり、ごつごつのこれでもかと言わんばかりの防弾チョッキでさえ貫かれることがあれば、ただのジャケットにしか見えない防弾チョッキが至近距離の銃弾を弾くことがあるので、一概に作中の描写が正しいとは限りません』」
「うわぁ、分かっててああいう結末にしたのにはどうかと思います……」
「『だから防弾チョッキを来て銀の弾丸を受け止めようなんてゼッタイしないでね☆』」
「「できるかぁぁぁぁぁっ!」」
――とまあ、体よくオチがついた辺りでこのコーナーも締め括りにしようかと思う。
「と、いつの間にか年が明けたね」
さわっちが時計を見て呟く。うわぁ、年末を無駄に過ごした気分だ。
「ええぃ、もういいっ! 旧年中の色々な不始末もあったわけだが、どうかこのお菓子野郎を見放さず、長い目で付き合ってやってくれぃっ!」
「それでは皆さん、今年一年良き年になるようにお祈り申し上げます」
そうして、『私たち』の一年はまた始まった。
作品名:掌編集【Silver Bullet】 作家名:最中の中