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掌編集【Silver Bullet】

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蛇足/スーパースネークレッグ




「んぁっ! うめぇっ!」
 そのボロアパートの一室で、私は目の前に粗末な水炊き鍋を囲みながらMを相手に、今年最後の一杯に口を付ける。
「しかしまあ、今年は色々あったなぁ」
 確かに、本当に色々な事件が起こった。
 雨女から、ヤクザの集落の襲撃まで、実に濃い一年だった。
 ……む、なんかいい思い出がないぞ。
 なんかいい思い出はないものか。そう頭を捻っていた所で、Mがこう切り出した。
「というわけで、このコーナーはこの掌編集【Silver Bullet】の裏話やら製作話を垂れ流す筆者ことお菓子野郎のオ○ニーページでございまする」
「あ、なるほど。そーいうことね。というか、巻末付録がこんなメタい書下ろしかよ」
「まあ、あのお菓子野郎、大好きだからなぁ。メタなネタ……」
 それだけが理由、という訳でもないのだろう。なんせ色々と分かり辛い話の作りになっていたように私も感じていたのだ。
「当初の予定ではドラッグ・オブ・ラビットの前日談である百々目鬼の薬を掲載しようという発案があったんだけど、あまりにあんまりの内容である為、今回は収録を見送ったとかなんとか。そりゃぁ、薬中狂気狂乱でかつカニバリズムな話は流石にC○RO‐Cを通り越してZまで行きかねないからねぇ」
「そんな夢を見てしまうお菓子野郎も大概だな……。というわけで、ここからは司会進行はオカルト大好き、ワタクシ『M』と……」
「解説は年齢、性別、実名不明の主人公こと『私』がお送りします」
 そうして、この巻末付録はスタートしたのだった。
「……無理がある紹介だよなぁ」
「まあ、ここに至るまで相当量の無理な表現を使った訳だし。これくらい許して欲しい。ところで、この名前とか性別の件、本当は設定があるんだろ?」
「いや、マジでないんだな、これが。『私』は徹頭徹尾『私』らしい。おまけに性別まで不詳だから会話では一人称と呼称禁止という無茶をやったとかなんとか」
「マゾだなぁ、あのお菓子野郎」
「因みに、君の本名はとりあえず設定されているらしいよ? この掌編集では個人名を使用せず、全てあだ名を使うという縛りもあって表ざたになることはなかったけど。『ミ』から始まって続きが『タ行』の名前だと思しき会話はあるけど」
「どの辺だっけ?」
「えっと――『神隠しの日』にて『M』と『私』が合流するシーン」
「なるほど。つまりMはイニシャルなんだな」
「いや、だから、ドMのMだって言ってんだろ」
「てめぇっ! 読者にそんな紹介してやがったのかっ!」
 そっちの方が面白いし。
「えーっと、登場人物は確か『私』、『M』、『夏の怪物』、『さわっち』、『抱き枕(仮)ちゃん』、『鏡』、『うみぞこのくじら』、『ともちん』、『ばっちゃ』、『たださん』と『妹さん』――あとは『佐藤』と『背広の男』くらいだね」
「『謎の男の子』と『謎の占い師』も忘れてやるなよ。まあ、この掌編集をまとめる時に話に統一感を持たせる為だけに書いた序章ぐらいにしか出ないけど。あとはうみぞこのくじらにもちらりと」
「一番謎の多いキャラだよね」
 端役でしかないのにキャラ描写は濃いのが問題なのだろう。
「抱き枕(仮)ちゃんと鏡はまだいいとして、夏の怪物とうみぞこのくじらは登場人物としてカウントしてよいものか……」
「まあ、最後のエヴoに影響されたかのような精神世界の描写でそれなりに活躍したからいんじゃない?」
 おめでとうで有名なあのラストシーンである。
「あの表現、一体なんだったんだよ。おれっちあたまわるいからまったくわからないんだぜ!」
「走馬灯とかその辺だと思ってください、だってよ。その辺の判断は読者に丸投げするってお菓子野郎言ってたよ」
「最低だなっ!」
「まあ、作品の判断を読者に丸投げするというテーマでこの掌編集は作られているからね」
「最低だなっ!!」
「だから、『私』の性別も明かさないし、『M』と『私』の関係性は読者の想像次第となっております」
「あくまで『私』は読者の視点だからか?」
「いや。読者が『私』の性別を自由に決めることによって、ノーマルカップリングからボーイズラブまで幅広く楽しめるようにというお菓子野郎の生暖かい心遣いに因るものだからだよ」
「最低だなぁっ!!!」
「男同士の友情、男と女の友情に萌える人も楽しめるよっ!」
「なるほど、この作品はそもそも欲望と邪念から出来上がっていたわけか」
 むぅ、そんなことはないんだけどなぁ。
「それじゃあ、そろそろ各掌編の解説に移っていいか?」
「はいはい。えーっと、それじゃあ最初は『雨女に関する考察』からだね」
「まずこの『雨女に関する考察』を書こうと思ったところから解説を願おう」
「そもそもこの作品は某所の読者参加企画の為に書いた作品で、それが世に出ることがなかったのでとりあえずpixivとnovelistにて投稿させていただいたのが始まりだよ」
「某所って?」
「電○」
「重いよっ! あそこのレーベルに投稿するには重すぎる話だぁ!」
「ついでに分量も二倍近くに膨れ上がっております」
「重いよっ! あそこのレーベルに投稿するには重過ぎる話だぁ!」
「今更だけど、いっそ電磁投射砲でも撃てばよかったかな?」
「ねぇよっ! いくら○撃だからってそんな小ネタいらねぇよっ! というかそーいうツッコミじゃねぇよこれはっ!」
「それで、この時のテーマが……雨に関するテーマだった気がする」
「それで雨女をテーマにした訳ね……」
「ほとんど関係ない話になっちゃったけどね」
「分かってんならどうにかしろよ……」
「まあ、一応下調べとか珍しくして書いた話だから、プロットとかしっかりしているよ」
「その辺は分かる。次の『夏の怪物は何を思う』も起承転結のお約束事を守っているようだけど」
「それは一発書き。プロット無しね」
「どういうことだってばよっ!」
「夏と言えば怪談、だったら怪談めいた話を書きたいと思って筆を走らせたもの、だそうです」
「そーいうわりには、怖い話とは程遠いぞこれ……」
「怪談めいた話を書きたいと思って筆を走らせたら、気が付いたら怪物を視点にしていたそうです」
「プロット書いてねぇなっ!」
「テーマは『幽霊見たり枯れ尾花』だそうです」
「身も蓋もねぇ……」
「まあ、正確には『幽霊見たり枯れ尾花だが、その枯れ尾花は幽霊足りうるなのではないか?』という感じだけどね」
「何でそんな面倒な話を書こうと思ったんだろうな」
「この掌編集全体に言えることだけど、『幽霊がいるかどうかはあなた次第』というテーマが前面に押し出された作品かと思われます」
「つまるところ、判断を読者に丸投げすると言う卑怯な姿勢がテーマに滲み出ているわけだな……」
「因みに、掌編集の中でも結構気に入っている話の一つだって」
「まあ、コメントも段違いだからな」
 身も蓋もない話である。
「ところで、この夏の怪物ってなんなんだ?」
「お前、作中で解説していたじゃないか」
「そういうヤクドコロだからだって。元ネタはなんなのさ?」
「その辺は……あ、解説文が来てる。何々、『夏に語られる数々の怪談の化身』だそうです」
「要は、怪談の擬人化みたいなもの?」
作品名:掌編集【Silver Bullet】 作家名:最中の中