掌編集【Silver Bullet】
「神道に置いて死や血という負の要因は穢れとされる。お前も思うだろ?」
一息吐いて、また一歩。すると、その雰囲気の気圧されたのか、男もまた足を笑わせる。
「――心地よい寝床が血生臭くなるのは嫌だって」
山がざわめく。まるで激怒するように。ざわざわ、ざわざわと。
その雰囲気を身に纏い、一歩一歩さわっちは足を踏み出す。
「あまつさえ、神を冒涜するようなその所業。許しておくべきかっ!」
突風が走り抜ける。山全体を揺らすような猛烈な風が、祠を重く包み込む臭いを吹き飛ばしていく。
「あ、ああっ!」
男はナイフを放り出して逃げ出す。男は藪の中に走り抜け、やがて姿を消した。
「ハッタリだけは上手いな、お前。何で突風が吹くことが分かったんだ?」
「僕は風を読むのが昔から上手くてね、今日は急に冷え込んだし、来るなと思ったんだ」
Mの疑問も当然だ。あれは常人離れしているタイミングだった。まあ、読めるというのだから読めるのだろう。そんな奴がいてもいいだろう。
「さ、急いでその子を病院に運ぶぞ。俺が麓まで運ぶから、誰か救急車を呼んでくれ」
そう言って、Mは子供を抱き上げる。私は携帯を置いてきたので、さわっちが携帯を取り出す。
麓に降りる頃には、救急車と合流できた。更に警察のパトカーも到着しており、私達は救急車に子供を預けると、すぐに警察官を例の祠へと案内した。
全てが終わる頃には、既に日付が変わっていた。
作品名:掌編集【Silver Bullet】 作家名:最中の中