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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン2-黄昏の帝國-

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第4章 渦中


《1》

 アレンの目の前でライザの形が変わっていく。
 漆黒の不気味な仮面。
「だれだよあんた?」
「隠形鬼……ト名乗ッテ置コウ」
 姿を現したのは隠形鬼だった。
 ライザとは似ても似つかない姿。変装というレベルではなかった。声、姿、思考までもライザをコピーしていた。
「オンギョウ?キ?ってことは鬼兵団かよ?」
「ソウイウ事ニナル」
「俺をどうするつもり?」
「未ダ解ラナイ。くらいあんとノ依頼デハ、生ケ捕リニシロト命ジラレテイル」
 命令があるにも関わらず、まだ解らないとはどういうことだ?
「少シ御喋リガ過ギタカラ、偽者ダト気ヅイテイタノカ?」
「いんや、はじめから気づいてたけど?」
「流石ダナあれん」
 ?流石だな?という言葉は、比較対象があっての言葉だ。アレンの情報は収集済みということだろうか。
「ところでさ、あんたここのことどうやって知ったわけ?」
「フフフッ」
 不気味な笑いだった。仮面で何を考えているのか、表情からではわからない。
「なんだよ、なにがおかしいんだよ」
「其レヲ答エル義務ハ無イ。今ハ〈すいしゅ〉ヲ探ストシヨウ」
「俺といっしょに探す気かよ?」
「此処デハ御前ガ頼リダ」
「頼られてもなぁ。記憶が曖昧だし、たぶんそういうの知らずに暮らしてたし」
 少しずつ蘇ってくる断片的な記憶。
 ここでの生活は穏やかなものだった。
 気候は常に安定しており、食べる物にも困らなかった。
 アレンがまず向かったのは小屋だった。この家でアレンは暮らしていたのだが、今に思えば不思議な家だ。
《お帰りなさいアレン》
 中に入ると声がした。
 外観も内装も木や石など自然の素材で造られているが、置かれている物の中には?失われし科学技術?の品々も多い。台所などはなく、冷蔵庫などもない。食べ物は時間になると箱の中に置いてあった。
「なんで俺こんなとこにいたんだろうな?」
 その問に答える者はいなかった。
 謎の包まれた生活。
 なんらかの研究目的だったのだろうか?
 それとも保護されていたのだろうか?
 アレンは必死になって思い出そうとした。
「疑問も抱かず、ただ生きていただけだった。同じような日々の繰り返し……それが終わったのは……思いだせねえ」
 アレンは頭を抱えて蹲ってしまった。
「第五次世界大戦ガ起キタノガ、丁度一〇〇〇年前ノ話ダ。其ノ戦イニヨッテ此ノ都市モ滅ビノ道ヲ歩ンダ。アノ戦イデ滅ビタノハ此ノ都市ダケデハナイ。世界モ文明モ一度ハ滅ビタ。砂漠化ガ急激ニ始マッタノハ、アノ戦争ノセイダト云ウノガ通説ダナ、フフフフッ」
「詳しいな、あんた」
「砂漠化ト言エバ、其ノ要因ヲ魔導炉ノセイダト騒ギ立テテイル奴ラモ居ルナ。特ニじーどト名乗ル過激組織ハ、帝國ノ魔導炉ヲ破壊シタソウダ。ソノ報イヲ受ケテ、我ラガ帝國ニ代ワッテ制裁ヲ下シタ訳ダガ」
「俺を挑発してんの?」
「否、世間話ダ」
「惨い殺され方だったけど、俺が敵討ちをする話じゃない。挑発しても意味ないぜ」
 お互いの間にまだ殺気はない。隙さえあれば仕掛けるという雰囲気もなかった。
 家の中を探してみたが、〈スイシュ〉らしい物はなく、そのヒントも見つからなかった。
「あんた〈スイシュ〉がありそうな場所知らないの?」
「知ラナイナ」
「ここのこと知ってたのに?」
「存在ヲ知ッテイタト言ウ程度ノ記憶シカナイ。〈すいしゅ〉ニ関シテ言エバ、其レガ装置ノ核デアルトシカ知シラナイ」
 水を生み出す装置。その核となる〈スイシュ〉。宝玉と云うのだから、その形をしているはずだ。
 この地下世界には川が流れていた。
 もしかしたらと思い、アレンは川の上流に向かった。
 川の上流には湖があった。ここが水源らしい。
「この底にあるとかないよな?」
「水底カラ高度ノ魔力ヲ感ジル」
「マジかよ、俺泳げたっけか……昔は泳げた気がするなぁ」
 と、言いながらアレンは熱い眼差しを隠形鬼に贈った。
「私ハ全ク泳ゲナイ」
「ちっ、俺が行くしかないのかよ」
 頭を掻いたアレンは観念して服を脱ぎはじめた。
 隠形鬼がすぐそこにいることなど気にせず、全裸になるアレンだったが、じっと見られているような視線には気になった。
「俺の躰ジロジロ見て、ロリコンかよ?」
「私ハろりこんデハ無イ」
 隠形鬼の口から?ロリコン?という言葉が出ると不思議な感じだ。
「じゃ、こっちが気になるわけ?」
 アレンは金属でできた右胸を叩いた。
「両方気ニナル」
「やっぱロリコンなのかよ!」
「否、人間ノ躰ト、機械ノ躰ノ両方ガ融合シテイル姿ガ、興味深イト言ウ事ダ。一度詳シク調ベテ診タイ」
「やだよ、ロリコンなんかに指一本でも触れられたくない」
「私ハろりこんデハ無イ」
 ロリコン論争はおいといて、アレンは準備体操をはじめた。
 枯れた大地で暮らしていると、泳ぐ機会なんてあまり訪れない。水泳は金持ちの道楽だ。
 準備体操を終えたアレンは、頭から湖に飛び込んだ。
 透明度の高い水中。水深もあまりなく、地の底まで見ることができた。
 アレンの泳ぎはというと、はじめは少しぎこちなかったが、だんだんと調子を掴んできたようだ。
 水底に輝きが見えた。
 一度アレンは水面に向かって泳ぎだした。
 水飛沫を上げて水面から顔を出したアレン。
「ぷはーっ!」
 潜っていた時間は三分ほど。まだ余裕があった。
 大きく息を吸いこんで再び湖に潜る。
 湖の中心に向かって泳ぐ。
 台座の上でそれは淡く輝いていた。
 透き通ったブルーの輝き。
 宝玉と云うが、その輝きは宝石の物ではない。
 もう手を伸ばせば取れてしまいそうだ。
 しかし、アレンは躊躇った。
 これを取ってしまっていいものなのだろうか?
 水を生み出す装置の核となる物。
 湖に蓄えられた水。
 アレンはその宝玉を手に取った。
 そしてすぐに水面へ上がり、岸に向かって泳ぎだした。
 陸に上がったアレンは宝玉を確かめた。水が出ているような感じはしない。台座から放したからだという可能性もあるが――。
「本当にこれが〈スイシュ〉なのか?」
「確証ハ無イガ、其ノ可能性ハ高イト思ワレル」
「だったらこれで俺の役割も終わったし、これ奪う気?」
「〈スイシュ〉ヲ手ニ入レル依頼ハ受ケテイナイ」
「でも俺のことは生け捕りなんだろ?」
「今ハ其ノツモリモ無イ」
「は?」
 隠形鬼が何を企んでいるのかわからなかった。
 〈スイシュ〉も奪わず、アレンも捕まえないとなると、何もせずにアレンを行かせるということなのか?
「依頼ハ受ケテイルガ、何時何処デトハ決メラレテイナイ」
「なんだよその屁理屈」
 アレンは呆れた。
「其レヲ少シ貸シテクレナイカ?」
「やっぱ奪う気じゃんか」
「少シ調ベルダケダ」
 相手は敵だ。しかも何か考えているのかわからない。
 迷ったが、アレンは宝玉を手渡した。
 受け取った隠形鬼は一秒とせずに返した。
「えっ、もういいの?」
「本物ダ」
「はっ?」
「其レガ〈すいしゅ〉デ間違イ無イ」
「今のでわかったわけ? そんなの信じられるかよぉ〜」
「信ジル信ジナイハ御前ノ自由ダ」
 違う物だという証拠もない。とりあえずはこれを持ち帰るしかないだろう。