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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン2-黄昏の帝國-

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 何度も何度も人質に取られ痛感した。人質に取られ周りに迷惑をかけているが、ひとりでいたらもっと人質に取られてしまう。セレンは戦う術を知らないのだから。
 トッシュは真剣な眼差しでセレンを見つめた。
「本当にいいんだな?」
「はい、なるべくご迷惑かけないようにがんばります」
「なら出発だ。リリス殿、アララトをご存じか? そこに行こうと思っている」
 そう聞いてリリスはタッチパネルを操作し出した。
「その場所なら自動運転で行けるよ」
 こうして全員車に乗り込み、新たな目的地を目指し車は走り出した。

《2》

 その都市は半分以上が砂に埋もれていた。
 古代魔導都市アララト。
 クレーターのように地面が大きくくぼんだ場所、つまり掘り起こされた場所にアララトはある。長い年月の間に砂に埋もれてしまった都市を、帝國が掘り起こしたのだ。それからまた月日が経ち、もう半分以上が砂に埋まってしまったようだ。
 セレンはそのアララトを眺めながら感嘆していた。
 そう、まるでその都市は――。
「巻き貝みたいですね」
 いくつもの巻き貝のような建物があり、都市の中心にある巨大な巻き貝は塔のように聳え立ち、その高さは六〇メートルはありそうだ。
 セレンの横ではワーズワースも瞳を輝かせていた。
「この光景を見ると、あの伝説は本当なのかもしれませんね。この都市はかつて海の上にあったそうです」
 辺りは砂漠しかないこの大地に海があったなど、だれが信じるだろうか。
 しかし、リリスは知っていた。
「そう、かつてこの都市は海の上に存在した。海上都市アララトと言えば、別名?煌めきの
都?と呼ばれるほど美しい場所じゃった。今は見る影も無い廃墟じゃがな」
 建物の下部分は砂に埋もれており、入り口が塞がれてしまっている。入れそうな場所は窓だが、建物の中まで砂に侵食されていないことを祈るばかりだ。
 この場に来て、アレンはまるで魂が抜けたように呆然としていた。心配になったセレンが声をかける。
「大丈夫ですかアレンさん?」
「…………」
「聞こえてますかぁ?」
「俺……あの天辺の部分、見たことあるような気がする」
 アレンが指差したのは都市の中心にある巻き貝の塔。
 ここまでやって来たが、なにか手がかりがあるわけではない。とにかく何かを探すしかない状況で、手始めに五人はその塔に向かうことにした。
 クレーターのようにくぼんでいる砂の丘は、一度滑り降りたら登るのが大変そうだ。まるで砂地獄のようである。しかし、この斜面を降りなければ、都市に行くことはできない。
 トッシュが皆の顔を見回した。
「降りるのはいいが、登ることはできないな。ロープもなにもない。こんな長いロープを調達するのも一苦労だ」
 ワーズワースが手を挙げた。
「はい、ええっと、あの浮いてる車なら大丈夫じゃないでしょうか。浮いているから斜面なんて関係ないような気がしますけど?」
「駄目じゃな」
 と否定してリリスは言葉を続ける。
「斜面が急すぎる。宙を浮いて走行していても、完全に引力を無視しておる訳ではないからの」
 なにかよい手はないのか?
 トッシュはお手上げだった。
「仕方ない、砂に埋まってるなんて予想してなかったからな。出直して準備を整えよう」
 その矢先だった。
 ふらふらとした足取りでアレンに足を踏み出し、そのまま転げ落ちていったのだ。
「あの馬鹿野郎!」
 トッシュはそう叫んでから、三人の顔を見た。
「おまえらはここで待機だ。トランシーバーで連絡する。二人はリリス殿に守ってもらえ、じゃあな!」
 トッシュも斜面を滑り降りアレンを追った。
 すぐにアレンに追いつくことができた。
「おい、勝手な行動するな!」
「…………」
 アレンは遠めをして歩き続けた。まるでトッシュの声が届いていないようだ。
「おいっ!」
「……待ってる……」
「は?」
「……楽園……俺はあの場所で……」
「頭大丈夫か?」
 アレンの足は確実に巻き貝の塔に向かっている。
 いったいアレンになにが起きているのと言うのだ?
 気配がした。
 地中からの気配にトッシュは気づいてアレンの腕を掴んだ。
 砂を舞い上げ、地中から飛び出してきた完全防備の兵士たち。防具の紋章はシュラ帝國の物だった。
 いくつもの銃口に狙われている。トッシュは銃を抜くことすらできなかった。ここで少しでもおかしな真似をすれば、躰が蜂の巣になるだろう。
 さらにこの場に現れようとしている巨人。
 砂の中から這い出して来た土鬼。
「トッシュ、トッシュ、トッシュ、トッシュ!」
「はいはいはいはい、俺様ならここにいるよ砂怪人。本当にしつこいぞおまえ」
「殺してやるーッ!」
 土鬼は両手をドリルに変形させトッシュに殴りかかってきた。
 戦う術がないトッシュは逃げることしかできなかった。
 右往左往逃げ回るトッシュに向かって、ドリルアームがロケット弾のように飛んできた。
 急いで伏せたトッシュの真上をドリルアームが掠め、兵士の躰を串刺しにした。
 混乱する兵士たち。
 危機が一転してチャンスになった。
「莫迦鬼が暴れてくれたおかげで助かったな」
 トッシュは〈レッドドラゴン〉を撃った。
 兵士の防弾ヘルメットを砕き飛ばした銃弾は、勢いを失わずに頭蓋骨を貫いた。
 兵士たちの躰はプロテクターによって守られている。ヘルメットの目元部分だけが、防弾プラスチックであり、ほかに比べれば弱い。
 しかし、そこを狙ったのはただのクセだ。
 再び〈レッドドラゴン〉が咆吼をあげ、今度は胸のプロテクターを撃ち抜いた。
 兵士たちは驚き慌てふためく。
 たかが銃弾が帝國の最新鋭のプロテクターを貫ける筈がなかった。
 〈レッドドラゴン〉が普通の銃弾を放つ銃ではなかっただけの話だ。
 この銃は?失われし科学技術?によるもので、トッシュが古代遺跡で見つけた物だ。銃弾は拳銃弾ではなく、先の尖ったライフル弾を使用。このライフル弾も特別製で、八〇口径という気の狂れた仕様であり、一度の装填できる球数は四発。現在の技術であれば、もっと銃を大きくしなければ銃が衝撃に耐えられないだろうし、撃った本人も腕の骨が砕けるだろう。
 ただ?失われし科学技術?を使っているらしいとは言え、魔導的な処理が施されているわけではないらしく、金属の製錬に?失われし科学技術?が使われ、ある程度の反動を抑え、銃の破損を防いでいる。そのためにはっきり言ってこれは不良品である。
 抑えきれない反動が大きすぎて、常人が撃てば骨を折るか肩が外れるか、それとも指を持って行かれるか。片手で撃つなどとんでもない。
 もしかしたら元々は、反動を抑える魔導処理が施されていたのかも知れない。それが長い年月によって消えてしまったとも考えられる。もしくは、人間用ではないのかもしれない。
 そんな化け物をトッシュは片手で使いこなしていた。
 トッシュの腕は鋼のように鍛えられているが、それだけでは化け物を手なずけることはできない。
 秘密は服の下にある。