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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン2-黄昏の帝國-

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 冷や汗を拭ったワーズワースは一つ咳払いをした。
「え〜っ、昔あるところにノアというオッサンがおりまして、〈ノアの方舟〉をつくって助かりました。おしまい」
「…………」
 無言でトッシュは銃口をワーズワースの口に突っ込んだ。
「あわわ……ご、ごえんなさえ……」
 必死で謝るワーズワース。
 トッシュは銃を抜いた。
「次はないぞ?」
「わかってます、今のは冗談です、次はしっかり話します」
 そして、ワーズワースは語り出した。
「遥かいにしえの時代、世界を洗い流す大洪水が起きました。その生き残りのひとりがノアという男です。〈ノアの方舟〉とは、保管計画のためにつくられた船艦の名で、洗い流された新たな世界で再び繁栄するために、生物のサンプルが乗せられたりしたらしいです。
 というのが神話の時代の嘘かホントかわからない伝承です。
 おそらく重要なのは、実在するアララトという名の古代魔導都市遺跡でしょう。そこはノアのゆかりの地らしく、方舟も近くにあるのではないかと言われています。あると言っても、伝承が嘘ではなかった場合の話ですが。そもそもアララトは伝承の時代よりも遥かに新しい都市ですから、あやかって名を付けただけというのが、研修者たちの大方の見方です」
 トッシュは頷いた。
「アララトなら聞いたことがある。過去に帝國が大規模な発掘作業をしたが、結局なにも見つからなかったらしいな」
 シュラ帝國がなにも見つけられなかった場所になにかあるというのか?
 それとも本当はなにかを発見していたが、それを隠しているとも考えられる。
「あとはリリス殿に聞けばわかるかもしれんな」
 そう言ってトッシュは銃口をワーズワースに向けた。
「ちょっとそれはないですよ。ちゃんと話じゃないですか、報酬として命くらい助けてくれても……」
 苦笑いで乗り切ろうとワーズワースはしたが、急に真面目な顔をして辺りを見回した。
「きゃーーーっ!」
 悲鳴が外から聞こえた。セレンだ。
 いち早くトッシュが民家を飛び出した。ハッとしたアレンも遅れて飛び出した。
 五メートルを超える巨大な人影。
「トッシュ、トッシュ出てこい、早くしねぇとこの尼殺すぞ!」
 土鬼の姿。
 そして、足を硬い土で固められて動けないセレンの姿。
「また……捕まっちゃいました。いつもいつもごめんなさぁ〜い」
 セレンは大粒の涙を流していた。
 土鬼には銃弾などが聞かない。砂と化して物理攻撃を無効化してしまう。
 銃を抜けないトッシュ。小さな声でアレンに呼びかける。
「おい、お前の銃なら前みたいにどうにかなるんじゃないのか?」
「セレンが近すぎる。電撃があっちまで飛ぶ可能性があるから無理」
「なら俺様がどうにかしてシスターを助ける。とりあえず奴の気を引いとけ」
「気を引くならあんただろ。あの野郎はあんたにご執心なんだからな」
「わかった、俺様が気を引いてシスターから遠ざけるから、すぐに撃て」
「オッケー」
 作戦は決まった。
 トッシュが全速力で走る。
「どこへ逃げるだ?」
 やはり土鬼はトッシュを追ってきた。
 それを見計らってからアレンがセレンの元へ走る。
 セレンの目の前まで来たアレンは言われたとおり、すぐに撃った。
「トッシュ逃げろ!」
「早すぎだ、俺様まで殺す気かっ!」
 構わずアレンは〈グングニール〉を放った。
 稲妻が叫び声をあげながら宙を翔ける。
 咄嗟にトッシュは地面に伏せた。
 しかし、その行為は逆に身を危険に晒す結果になった。
 巨大な土塊の手が振り下ろされる。
「おらを昔のおらだと思うな!」
 電撃が効いていないのか!?
 トッシュは逃げる間もなく巨大な手に潰されようとしていた。
 突然、アレンが耳を塞いだ。
 トッシュやセレンはその音を聴くことができなかった。
 巨大な手が分解されトッシュに降り注ぐ大量の砂。
「うががが……合体が……おらに躰に……なにが起きた!?」
 土鬼自身も自分の身に起きたことを理解できていない。
 セレンを捕らえていた足の土塊も砂と化していた。
 この状況の手がかりはアレンだけが知っていた。
「音だ……頭の中がキーンとしやがった」
 アレンだけが感知できた音。
 砂に埋もれていたトッシュが這い出してきた。
「どうやら助かったようだな。やはり電撃が効いたのか」
 それにアレンはなにも言わなかった。
 しばらくしてワーズワースが物陰から出てきた。
「いやぁ、怖かったですね。なんですかあれ、見たこともない怖ろしい化け物でしたね」
 アレンはワーズワースに顔を向けた。
「まだ死んだわけじゃないぜ」
「え?」
 目を丸くするワーズワース。
 そう、まだ土鬼は死んだわけではない。
「おれの躰が……躰が……動かねぇ……うぉぉぉぉん!」
 あたりの地面に同化してしまって、どこにいるかわからないが、声だけが聞こえてくる。
 トッシュは服についた砂を払いながら辺りを見回した。
「うるさいが、止めの差し方がわからん以上は放置だな」
「覚えてろトッシュ……おれが必ずぶっ殺してやる……」
 トッシュは背中でその声を聞いていた。
 敵の襲撃を受けた以上、この場所はもう危ない。
 まだ敵が潜んでいる可能性もあり、そうでないとしても、土鬼から連絡がなければいつかは不審に思われるだろう。
「徹夜で走るぞ、みんな車に乗れ」
 トッシュは車に向かった。
 辺りを見回しながらセレンが気がついた。
「あれっ、リリスさんは?」
 探し回ったがリリスは見つからず、仕方がなく車で待つことにしたのだが――。
「呑気な婆さんだな、寝てやがる」
 トッシュは呆れた。
 運転席で寝ていたリリス。
 ドアはロックされ、リリスが起きなくては車に乗れない。運転もリリスでなければできない。
 アレンがドアを叩いた。
「起きろよ、勝手に寝てんじゃねえ!」
 返事はなかった。
 ワーズワースがボソッと。
「お年寄りは早寝早起きですから」
「年寄りで悪かったね」
 そう言ってリリスがドアを開けた。
「ぼ、僕は自然の摂理を言っただけです」
 ワーズワースはセレンの後ろに隠れた。
 トッシュはさっそく助手席に乗り込もうとした。
「リリス殿、悪いができるだけ遠くまで車を走らせて欲しい。今さっき敵に襲撃されたばかりで、ここも危ない」
「行き先がなきゃ自動運転はできないよ。まさか夜通し年寄りのわしに運転させる気じゃないだろうね?」
「なら安全そうな町まで行ってシスターを下ろす。それから次の目的地は言おう」
 降りるのは自分だけ――とセレンは驚いた。
「わたしひとりですか? ひとりにされたら、そんな無理ですよ。あのワーズワースさんは?」
 答えるのはワーズワースではなくトッシュ。
「こいつは俺様たちといっしょに行く。いいよな、若造?」
 プレッシャーを放ちながらに笑ったトッシュ。脅しだった。
「ぼ、僕はご一緒したく……」
 言いかけたが、腹になにか硬い物を突き付けられて、言葉を開けた。
「ご一緒させていただきます。吟遊詩人はロマンを求めてどこまでも」
 みんなと別かれることになってしまうと知ったセレンは慌てた。
「わたしも行きます!」
 ひとりでいるほうが危険だ。