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覇剣~裏柳生の太刀~

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早乙女流道場で検視が行われ、その間、剣士は龍権との経緯を二人の刑事に話した。
事情聴取は道場の隅で行われた。
「信じられないな、あなたが早乙女強(さおとめ つよし)先生、の孫で、昨日、その早乙女強先生と真剣試合を行い、その結果、剣剣士さんが打ち負かしたと」
二人の刑事は納得がいかないという顔つきでそう話した。
「信用出来ないと思いますが、今、私が生きていて、話をしているということは、つまり、その、事実としか言いようがないんです」
剣士はそう力なく話した。
 にわかには信じられない事件だった。
誰が聞いてもすぐには信じられない話だった。
信じる、信じない、そのような次元では話は片付けられないことだった。
二人の刑事は明らかに困惑していた。
それはそうだろう、ただの痴話げんかのような家族内での殺人事件だと思っていたからだ。
簡単な事件だと二人の刑事はたかを括っていた。
ろくに事件の内容を聞かなかった婦人警官にも責任が無い訳ではない。
しかし、普通ではなかった、いや、普通の事件など何処にも無いのかも知れない事に改めて刑事たちは悟るしかなかった。
伝説の男、早乙女強が埼玉の秩父の山奥にいたのだ、それが第一に驚きであった。
それだけでも驚きなのに、第二に早乙女強は目の前の若者に倒されたのだ。
真剣の試合で倒されたのだ。
真剣ということは勝負が生か死か、しかない。
真剣の勝負は基本的に禁止されている、いや、じつは正式な手続きさえすれば合法的に真剣勝負の試合は許されている。
とは言え真剣勝負は誰もが簡単に出来るものではない、誰もがしたいものでもない、しかるべき者達が、しかるべき資格を持ち、しかるべき場所で行われるものでなければならない。
それが試合であり、死合いといわれる由縁でもあった。
二人の刑事はそれぞれに思い出していた。東京ドームで、武道館で、横浜アリーナで、埼玉アリーナで、あの熱狂し、文字通り熱狂し、熱に浮かされ、恐怖し、心酔し、畏怖と尊敬の念を心に刻んだ数々の、あの試合を、思い出していたのである。
作品名:覇剣~裏柳生の太刀~ 作家名:如月ナツ