「姐ご」 13~16
「姐ご」 (16)
崩壊の波
潤沢な資金を持て余したエクセルが、ついに暴挙に出ます。
資金運用と銘打って、同じIT関連で
急成長中の会社の株に投資をはじめました。
初めは上手く行きました。
こちらのIT会社も時流に乗って、
風雲児的な成長を遂げ続けていました。
倍々ゲームのような利益と投資が繰り返され、ここから際限のない
マネーゲームが始まりました。
成り上がりぶりとIT時代を象徴する新時代の社長として、
この男はマスコミにも度々登場し、
このIT会社はやがて全国ネームにのし上がりました。
第2のバブルとも言われはじめ、
インターネットを中心にこの会社の株が日本中で爆発的に売れ始めます。
株の分割というあらたな手法も駆使をして、
膨大な数の株券が流通をしはじめました。
ひとつの株を100にも分割をするという方法で、
この会社の株は、あっというまに膨大な数の株式に変わりました。
インターネットが生んだ、新しい時代の錬金術の誕生でした。
しかし粉飾決算が、
このIT企業の神話を一瞬にして崩壊させてしまいます。
その年の決算報告として提出された有価証券報告書に、
虚偽の内容を掲載したとする疑いが持たれました。
証券取引法等に違反したとして、法人としてのこのIT企業と、
同社の取締役が告発をされてしまいました。
通常の粉飾決算事件は、
企業が経営破綻してから捜査されたのに対し、
経営破綻していない会社が捜査されるということは、
たいへんに珍しい事例です。
約50億円ともいわれた粉飾額は、金額だけをみると過去の粉飾事件と
比べてもきわめて少ない額ともいわれています。
しかし前年比で見た場合、経常利益が-120%で赤字転落のところを、
+300%の大幅黒字増と書き変えていて、過去の粉飾事件と比較しても、
あまりにも大きな粉飾率が特徴となった事件でした。
さらに会社はこの時期に、約1600億円の資本金を調達し、
代表取締役社長は約145億円の持株を売却して利益をあげていたのです。
株式分割という手法を駆使して、
違法の疑いのある手段で発行した自己株式を使って
一般株主から集めた資金であるということも、
にちに問題となりました・・・・
作品名:「姐ご」 13~16 作家名:落合順平