「姐ご」 13~16
「姐ご」(15)
急成長の影には、
廃屋寸前になりかけていた高崎競馬のトレーニングセンターに、
にわかな活気が戻ってきました。
工藤厩舎に所属する「エクセル」の所有馬も、
120頭を超えてしまいました。
一人の厩務員が面倒みることができるのは
せいぜい3~4頭が限度です。
増え続ける育成馬とともに、それにかかわる人の数も増え続けます。
わずか一年足らずのうちに、工藤厩舎は総勢40名を
越える大所帯になりました。
「エクセル」による資金集めの目玉商品、ハイセイコーの血をひく
地方競馬出身の有望馬、2頭が工藤厩舎へ到着をしました。
エクセル自体は、インターネットで一口馬主から資金を集めるだけの
小さなIT企業にすぎません。
従業員も10人足らずですが、時流に乗って
20億とも30億ともいわれる資金集めに成功をしました。
工藤厩舎はついに、
急成長するエクセルの競走馬の「物流倉庫」に変わってしまいました。
本来、産地から買い付けた新馬に調教をつけて、地方や中央の厩舎に
送り込むまでの育成と管理の担当のはずが、いつのまにかエクセルが所有する
すべての馬の管理と育成をする一大管理場に変わってきました。
作品名:「姐ご」 13~16 作家名:落合順平