「姐ご」 13~16
♪~だ~れのためにィ、走るのかァ~
何ァにィを求めて、走る~のかァ~
工藤の18番「さらばハイセイコー」です
姐ごが深い溜息と一緒に、煙草の煙を吐き出しました。
すこしやつれた様に見えます。
「で、どうなんだ、総長のその後は」
「あんたは奇跡的に、
ゴルフができるまでに回復したようだけど、
うちのは、たぶん駄目だろうなぁ、
現代医学とお金の力が、生かしているようなものよ」
「んん・・・・おい鉄屋、
姐さんに、何か余計なことを言っただろうお前」
「いやいやアニキ。
俺は兄貴が内緒で、自宅でゴルフの猛特訓中だなんて、
口が裂けても他言しちゃぁいないぜ。
わざわざ物置を改装して、24時間いつでもできる
自分専用の練習場所を作ったなんて、
口が裂けてもいってなんぞおりません。
ねっ、ほら、
これ、これこの通り・・・・」
「ば~か、やろう。
全部ばらしやがってこの野郎、
だから、余計なおしゃべり野郎だっていってんだよ、
おめえは」
♪~恋にィ別れがァ、あるゥように~
この日がァ来るのが、恐かったぁ~
ありがとう・友よォ~、さァらば~ハイセイコーォ~
「でどうなんだ、本妻は。
その後、ちゃんと病院には来てるのかい?
巷じゃ、ご無沙汰しっぱなしだという噂だが」
「あれっきりかなぁ~、入院以来・・・
組のほうは、
あんたがいじめた麻雀好きの代行が後目を継いだから安泰だけど、
本宅の方は相変わらずの、なしのつぶてのまま」
「本妻が面倒見ないで、愛人任せかよ・・・・
何考えていやがんだろう、まったく
あっいけねえ、すまねぇ姐ご。
俺まで、余計なことを言っちまった!」
「いいよ、ほんとのことだもの。
早いもんで、愛人生活も、もうふた昔にもなるよ
歯がゆいよねェ・・・・総長と20年も一緒に暮らしていても
あたしはいまだに、日蔭者だもんね、」
♪~幾十万ンのォ、観衆にィ、真心見せたァそのォ姿ァァ~
「おいっ、聴いてんのか、
そこで、ぴぃちくぱぁちく囁いている不良の中高年ども!」
「うれせェ、黙って歌え、この北の種馬!」、
装蹄師が、切り返しています。
♪~、哀しいィだろう、辛かァろう~、
たたかいおわってェ、馬場をさるゥゥゥ~
ありがとう・友よ~ォ、さらばァ~、ハイセイコーゥ~~♪
たたかいが終わって馬場を去ったのは、
ハイセイコーだけではありませんでした・・・その話はまた
(15)で詳しく書きたいと思います。
作品名:「姐ご」 13~16 作家名:落合順平