「姐ご」 13~16
話題性豊富で、
かつ種馬としても多くの優駿を輩出したこのハイセイコーに
一口馬主の投資会社「エクセル」のプロジェクトが注目をしました。
ハイセイコーは既に、2000年に亡くなっていますが、
その血を分けたおおくの競走馬が、地方競馬に
散逸しながら活躍をしていました。
ハイセイコーの「夢よもう一度」の大コールの中、
エクセルは数10億の資金を集め、
調教師の工藤はハイセイコーの血統を辿りながら
優駿の軌跡をひたすら探し回っていました。
「で、居たのかい、そのハイセイコー・二世は? 」
瓦屋と装蹄師が、疲れきっている顔の工藤を覗き込みます。
この日も工藤は地方競馬の厩舎からたった今、戻てきたばかりでした。
普段から日に焼けてアサ黒い顔が、疲れで一層、黒ずんでさえ見えます。
「うんまぁ、2頭ほど居た。
まぁ、片手(5000万)くらいなら手を打とうと思ったんだが、
なにせひっ迫している地方競馬のことだ。
唯一の知名馬なのでなかなか手放そうとしない。
工作に時間がかかりそうだ」
「いまどきの地方馬に5000万かい。
豪勢なもんだ・・・
ハイセイコーが中央競馬に売られた時と
同じ金額だぜ、奇遇だね。」
「おいおい、30年前の5000万だぜ、
今の数倍の値打ちはあっただろう。
今ならざっと換算しても、二億以上の価値はあると思うぜ。
なにしろ、奇跡の名馬・ハイセイコーだ」
「あら、何のお話?
ずいぶんと盛り上がっているわね」
少しほつれ髪の姐ごがやってきました。
最近はほとんどお店には顔を見せず、病床の総長につきっきりの看病です。
煙草をくれる?、
と指定席のように瓦屋のとなりに腰を下ろしました。
入れ替わるようにして、工藤がカラオケで席を立ちます。
作品名:「姐ご」 13~16 作家名:落合順平