「姐ご」 13~16
「あっけないほどの、幕切れだ」
ぽかりと、瓦屋が煙草の煙を吐き出しました
いつものゴルフ練習場のことで、まもなく昼さがりにさしかかります。
真っ青な秋空を、刷毛で掃いたような白いすじ雲が
ゆっくりと流れていきました。
人影が瓦屋の前を横切りました。
「形のいい、良い腰を、してやがる」なにげに瓦屋が見送ります。
少し細身ですが、ひきしまったそのお尻の形が、
瓦屋にはなんとも妖艶でした。
どこかで、見覚えが有るような気もしました・・・・
瓦屋の指定席ともいえる、その練習打席で女が素振りを始めました。
まだ瓦屋もそこへ道具を置いているわけではないのですが、
空席と言えばそれまでの話でした。
(それにしても、俺の縄張りで、
練習をしようなどとは、いい根性をしている女もいるもんだ。
それにしても、いい女だぜ。
腰のくびれ具合と言い、
きゅっとしまった尻の格好と言い、まったくたまらねえものがある。
妙に、そそる女だぜ。
まァ面白そうだから、ここはひとつ
お手並み拝見で、高見の見物と行くか・・・・)
などと瓦屋が、鼻の下を伸ばし、目を細めて見入っています。
練習打席の女が、ボールをセットしました。
優雅に静かに前傾をして、アドレスの姿勢に入りました。
ほう・・・・なかなかのもんだ、いいアドレスだ。
クラブを構えた姿も絵になるとは、ほんとうに惚れぼれするような良い女だぜ。
しかし、どうも何処かで見た気がするが、気のせいかなぁ。
このあたりでは、ちょっと見かけない女だが、
だれだったかな・・・・思いだせねえな・・・・
おっ、打つぜ。
いい球を打ちそうだ・・・・
作品名:「姐ご」 13~16 作家名:落合順平