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僕の村は釣り日和6~和みの川

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「ふふふ、お前のアドバイスが効いたのさ。対岸の落ち込みの脇でルアーを潜らせて振ったら、狙いどおりにイワナが食いついたんだ。ブラックバスもいいけど、渓流は流れがあっておもしろいな。流れの中に突っ込まれると一瞬、ヒヤッとするぜ」
 東海林君が照れたように笑った。
「対岸の落ち込みじゃ、俺の竿は届かないな……」
 高田君は自分の竿と流れを交互に見つめながらつぶやいた。
「ルアーにはルアーの、餌釣りには餌釣りの良さがあるんじゃないかな?」
 僕がそうと、東海林君も高田君も僕の方を向いた。
「そうだな」
 そう先につぶやいたのは高田さんだった。
「このイワナ、お前にやるよ。家族へのおみやげにしろよ。俺は釣りを楽しむだけで十分だからさ」
 東海林君が高田君に言った。彼にはポールさんにブラックバスをプレゼントした記憶が鮮明に残っていたのだろう。
「俺を見くびるなよ。数ではルアーなんかより、餌釣りの方が有利だぞ」
 高田君が鼻息を荒くした。
「まあまあ、こんなところで言い争っていても仕方ないだろう? 東海林君だって悪気があったわけじゃないんだから」
「わかってるよ。しかし俺も正直、ルアーを見直したぜ。今までこんなもので魚が釣れるわけがないって半分バカにしていたんだ。でも、目の前でこんな大物をあっさりと釣られたんじゃ、認めないわけにはいかないもんな」
 高田君は心底感心したように言った。
 東海林君が少し照れたように笑ったかと思うと、急に真顔になった。
「俺も正直なことを言うと、この村に来るの、本当は嫌だったんだ。都会での生活に慣れていたからな。でも今はすっごく好きだぜ」
「そう思えば、お前はもう村人だ。俺たちの仲間よ」
 高田君が笑いながら手を差し伸べた。東海林君も手を差し伸べる。二人はしっかりと、力強く握手した。東海林君が本当の村人になった瞬間だった。おそらく今度の月曜日に学校に来た彼は、今までとは違うだろう。
 ビチビチ。
 足元でイワナが跳ねた。
「いけね」
 東海林君が慌てて針を外し、イワナを流れの中へ返そうとする。
「ちょ、ちょっと待てよ。逃がしちゃうのか、それ?」
 高田君が慌てたように叫んだ。
「俺は釣りを楽しむだけだからね。それに魚籠も持ってきていないし」
「だったらもらうよ。おかず、おかず」