僕の村は釣り日和6~和みの川
「すげえ、猿だったな。一匹で群れを追い払っちまうなんてよ。かつては風格のあるボス猿だったんだろうな。何かの理由で群れを離れて、今ははぐれ猿ってところか」
高田君が感心したように言った。
東海林君はモヒカン猿の消えた方をいつまでも見ている。その口から意外な言葉が漏れた。
「お父さん……」
「えっ?」
空耳だったかもしれない。それでも僕の耳には確かに、そう聞こえたのだ。
「あの猿の目、死んだお父さんの目にそっくりだったんだ」
東海林君はなおも森の奥深くを見つめ、そうつぶやいた。
作品名:僕の村は釣り日和6~和みの川 作家名:栗原 峰幸