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笑ミステリー 『女王様からのミッション』

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 高見沢はクラマの下になり、抜け殻になりつつある指先をしっかり押さえ込んだ。クラマはそのサポートを得て、手袋を脱ぐように右手も抜き出させた。そして、今、クラマ姫は古い皮膚を引き離し、新しい上半身を露わにさせた。
 クラマは上半身を上方に向けて思い切って伸ばす。まことに気持ち良さそう。
 首筋から背筋をぐっと反らし、その反対に顔と乳房を天に向けて、ためらいもなく突き出させる。
「だけど卵生なのに、なぜ豊かな乳房が? ホント不思議な生物だなあ」
 高見沢がこんな不可解なことをぼんやりと思っていると、クラマが明るく声を掛けてきた。
「高見沢さん、ありがとう、私やっと上半身が脱げたわ」

 脱皮し立てのホヤホヤ、湯気も立ち上るようなクラマ姫の裸身。高見沢はそれを拝ませてもらって、あまりの華厳さに、これはビーナスの生まれ代わりかと目が奪われた。
 肌は薄いのか、乳白色で静脈血管が透き通って見える。そして目の皮質も一皮めくれたようだ。
 そのグリーン・アイズにはもう青味掛かった濁りはない。どこまでもグリーンに澄んでいる。それは卑弥呼女王と同じく、曇りのないエメラルド・グリーン。
 すべての色合いが、そしてすべての姿態が端麗で美しい。
 お見事!

 脱皮の次のプロセスは、下半身。それはきついジーンズを脱ぐ動作に似ている。クラマは、太股から爪先までのあらゆる足の部位を高見沢に擦り付けて、古い皮を少しでも下へずらそうとする。
 高見沢はそんな行為を全身でサポートしながら、なぜかふーとクラマの切ない女心を思うのだった。
「究極の愛を誓い合ったクカンテーツ王子、彼はこの青い光の中に隠れているとわかった。そしてクラマ姫は、すぐにでも捜しに行きたい。しかし逢った時のことを考えれば、新しく生まれ変わった姿でと思う。そのために、こんな重労働の脱皮をしている。うーん、これって泣かせる話しだよなあ」
 高見沢は無性にクラマのことが愛おしくなる。そのせいか、残された脱皮作業を必死になって手伝う。
 そしてその甲斐あってか、クラマはやっとのことでスラッとした二本の長い足を抜き出した。
 こうしてクラマ姫は、全脱皮作業を完了させたのだ。