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笑ミステリー 『女王様からのミッション』

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 しかしクラマは、いつの間にか敷き詰められた青バラのの絨毯の上に、その美しい裸体を艶(つや)やかに横たわせている。
「高見沢さん、脱皮ホルモン・エクダイソンの分泌が多くなってきたわ。もう私は脱皮に集中しなければならないの。さっ、無念無想の石っころとなって、私のそばに来て寄り添ってちょうだい」
 そんな指示が飛んできた。しかし、高見沢は一瞬躊躇する。
「こんな綺麗な女性を野っ原で裸にして、俺も裸になって寄り添うなんて、これってひょっとしたら、罪を犯すことになるんじゃないかなあ」

 されど高見沢はやっぱり男の子。ここはその願いを受け入れて、喜んでそれに応える。
「それではお姫様、失礼ながらお仕事を開始させて頂きます。よろしいですか?」
 高見沢はそう告げて、裸のクラマのそばへと歩み寄る。
「おう、なんときめ細やかな玉の肌なんだ、これって、脱皮前? これを捨てるのか、実にもったいないよなあ」
 高見沢はそんなことを呟きながら、もう一度その匂い立つエロスの裸体を眺めてみる。その瞬間、高見沢は我が目を疑った。
「あのークラマさん、お取り込み中だと思いますが、ちょっと発言させてもらって良いですか?」
「どうぞ、簡潔に」

「あのぉー、おへそがないのですけど」
 クラマはこんな高見沢の疑問にホホホと笑い、「だからさっきお話ししたでしょ、私は哺乳類と違うのよ。卵生なのよ」と答える。高見沢はあらためて「なるほど、そういうことなんだ」と腑に落ちた。
「じゃあ、合点できたのなら、しっかりと石っころとしてお務め下さいね」
「あいよ!」
 高見沢の返事が異常に歯切れ良い。普通のサラリーマン社会では。、生涯経験することがないだろうこんな奇怪な出来事、高見沢の思考そのものも、実に非日常的なものになっている。
「クラマ姫のために、僕は一体どうしたら……、石っころらしい石っころになれるのかなあ?」
 そんなことを一生懸命考えているのだ。

 しかし、クラマは「う、う、うー」と苦しそう。かなりのエネルギーを使い始めているようだ。多分脱皮のプロセスが進んだのだろう。
「高見沢さん、お願い、私の皮膚を愛情を込めて揉みほぐしてくれない」
 クラマがかぼそい声でリクエストしてきた。