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笑ミステリー 『女王様からのミッション』

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 しかし、それはあまりにも狭過ぎる。そして、その奥はまったく未知の世界なのだ。そのためか、高見沢にもビビッと震えが走る。しかし高見沢は腹を据えた。
「さっ、クラマ姫、俺が先に入るから、後ろからついて来たらいいよ」
 高見沢はとにかくメタボの身体を精一杯細くして、いや、そういう気持ちで、その狭いすき間の中へと入った。もちろんズルズルズルと、腹が擦(こす)れに擦れる。しかし、一旦入ったものは、爪車・ラチェットのように元には戻らない。

 恐ろしくなってきたが、「クラマ姫のために、精一杯の尽力をして上げて下さいね」、そんな卑弥呼女王のお言葉が脳裏を過ぎって行く。
「えーいこうなりゃ、遭難なんて覚悟の上じゃ!」と、雄叫び一発。
 するとその途端に、ズルッ、……ズルズルーン! 高見沢は穴の中へと呑み込まれてしまった。そして、その後を追って、クラマが実にスルスルスルと入ってきた。

 二人が入り込んだ穴、そこにはより地下へと続く長い階段があった。
 高見沢は用意してきた懐中電灯で、クラマの足下を照らしながら、階段を下へ下へとクラマを誘導する。このお務めを江戸時代風に言えば、これぞまさに提灯持ち。
 二人は五分ほどだろうか、その地下の底へとより深く潜り込んで行った。そして突然、東京ドームほどの大きな空間へと出たのだ。
 そこはもの音一つ聞こえてこない静寂な空間。無の世界なのだろうか。古代から今日まで、そして未来へと、永遠にシーンと静まりかえっているのかも知れない。

 二人の呼吸音だけが、この世の音。そんな森閑とした世界がそこには広がっていた。
 しかし、そこは暗黒の世界ではなかった。どこかからか光が差し込んできている。そのためか仄かに明るい。
 そしてよくよく観察してみると、冷えた夜が明け行く時のように、光の粒々がキラキラと飛び跳ねている。
 そんな光たちの隙間を縫って、二人は遠くに焦点を合わせる。すると、その空間のど真ん中に、なんとどーんと座っているのだ。

 それは……天車。
 直径五十メートルはあろうかの大きな天車が。つまりメタリックに輝く空飛ぶ円盤が鎮座しているではないか。
「スッゲーなあ、こんな鞍馬山の地下に、こんなドデカイUFOが眠っていたなんて。クラマさん、これって何なのか知ってる?」
 高見沢はすぐさま尋ねてみた。