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笑ミステリー 『女王様からのミッション』

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「えっ、彼氏でもできたのか、一体何があったの?」
 高見沢はそう声を掛けたくなった。しかし、マキコ・マネージャーは機を見るに敏。そんな疑いの面容(めんよう)を無視し、さっさと挨拶をしてくる。
「高見沢さん、御苦労様でした、そしてクラマ様、ようこそ邪馬台国に来て頂きありがとうございます。私は邪馬台国・情報部のマネージャーをしておりますマキコです。グリーン・アイズ・プロジェクトのリーダーもしていますのよ、オホホホホ」
 そしていつもの通り一言多いのだ。

「ところで、このオッチャン、何かHなことをしませんでしたか?」
「オホホのお姉さんよ、アホなこと聞くなよ。Hなことって、どういう意味だよ」
 高見沢はムカッときた。クラマはそんな様子を見て、「高見沢さんは大変紳士的で、ここまで何も破廉恥なことはなされずに、無事にエスコートして下さいましたわ」と、ちょっと歪んだフォローをしてくれる。
「そう、それはラッキーだったわね」
 マキコ・マネージャーはそう口走り、「それじや卑弥呼女王がお待ちですので、私が御案内致します」と、いつも通り長いドレスを力強くごいっと引き上げて、先頭に立ち、今度はぐいぐいと歩き出す。

 前回の訪問時と同様、いくつかのエスカレーターとエレベーターを乗り継いで、そして長い廊下を進み、大きな空間へと出た。
 そこはまるでジュダイの神殿のようでもある。とてもその場所が地下にあるとは思えない。人間界では都市再生で、ジオフロント(GEOFRONT:地下都市)が発展しつつあるが、そんな人工的な構造物ではない。まことにミステリアスで、玄妙な異空間だ。
 肌にひんやりとした微風が感じられる。それは夢見月の風なのだろうか、そこには未来への期待を呼び起こす心地良い冷たさがある。
「気持ちい〜い!」
 高見沢とクラマはその冷涼感を脳の芯まで沁み込ませる。そんな時に、遠くの空間からスラっとした美しい女性が現れた。
 それはまさに卑弥呼女王。崇高な貝紫のロングドレスを身に纏い、そして頭上には真珠の冠。見るからに気位が高そう。しかし、森羅万象、そのすべてを包み込む優しさが伝わってくる。

「ヨッ! 卑弥呼女王の御登場、お久し振りで〜す!」
 高見沢は思わず声を発した。
「シッ! 静かにしなさいよ!」
 横からマキコ・マネージャーの制止が掛かる。