笑ミステリー 『女王様からのミッション』
いつも時の流れに身をまかせ、ふわふわと生きてきた。そして高見沢は、こんな女性の主張には永久に勝てないことも充分承知している。
「マキちゃん、それってエローくっさいサラリーマン的な発想だよね。もうそろそろマキちゃんのその古典的な思考、アンタのパンツと一緒に捨ててしまったら」
高見沢は議論を変えるためにも、こんな進言をマキコ・マネージャーにしてみた。マキコ・マネージャーは高見沢の言う古典的思考に少し執着するところがあったのだろうか、「そんなぁ〜!」と意味不明に一発叫んだ。
しかしすぐに気を取り戻し、今度はパートナーらしく、「だけど高見沢さん、よーく考えてみて、その女性が、まずは高見沢さんに興味を持たなきゃダメなのよねえ」と。
「うーん、女性が俺に……、興味をね」
高見沢はマキコマ・ネージャーに突っ込まれて、急に自信がなくなった。そしてついに、「なにか妙案があるのだろ、それを教えてつかーさい」と白旗を揚げた。
「モチあるわよ。なんと言っても、その最初の出逢いが大事なの。だから、それを成功させるためには……まず、お土産が必要なのよ」
マキコマ・ネージャーはこう述べて、後はシレッとした顔をして澄ましている。
「うーんなるほどね、アクション・プランの第一ステップはお土産か。ところでマキちゃんて、天下の邪馬台国の情報部・マネージャーだったよね。その割に発想がちょっとね、……、貧弱じゃない?」
高見沢はそんな嫌みを言ってみた。しかし、マキコ・マネージャーはびくともしない。
「あーら高見沢さん、俗世間の常識を知らないの。女性の口説きの基本を、それは【マメで、ヨイショで、プレゼント】よ」
「へえ、マキちゃんて、割に人間臭い発想をするんだ」
高見沢は驚き、そして「心根は、結構可愛い女性なんだね」と早速ヨイショする。
「ありがとう。だけどね、問題はプレゼントにするお土産の中身よ。ちょっと女性が喜ぶものは何かを考えてみてちょうだい」
そんなことを突然質問されてもわからない。
「女性が喜ぶお土産ね、そりゃ現金かな」
とりあえずそう答えた。
「最初からキャッシュはダメよ。不審な男にいきなりキャッシュを掴まされたら、これどういう意味って警戒するでしょ」
「そしたら名物。そうだ、博多なら明太子、広島ならもみじ饅頭、それに京都なら生八つ橋かな。うーん、どうだ、このアイデア良いだろ?」
高見沢は自分で勝手に得心している。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊