笑ミステリー 『女王様からのミッション』
「京都へ行きましょうって、そんなこと言って女性につきまとったら、ストーカーに間違えられるのが関の山よ。そんな高見沢さんがどうアプローチして、どう説得して、京都に連れて帰ってくるのか、その具体的なアクション・プランは? それを持ってないと、駄目よ」
さすがIT/バイオ/ナノテクと時代最先端を走る技術立国・邪馬台国でマネージャーを張る管理職レディー、仰ることが違う。
それに比べて高見沢、何をするにも【ウン・ドン・コン】(運と度胸と根性)。そして行き詰まると、「やってみてから考えよう」と居直る。その挙げ句は猪突猛進。
こんな自己行動規範で会社生活を勤め上げてきた。どうもマキコ・マネージャーとは問題解決の取り組み方が違うようだ。
まず最初に計画、そう、アクション・プランありきなのだ。しかし高見沢にもプライドがある。
「計画なんていらないよ、すべては出たとこ勝負だよ。それが気に喰わないのだったら、初めから俺を指名するなよ」
高見沢は追い詰められて、もう開き直るしかない。二人の間に気まずい空気が……。今にも激しいファイティングが始まりそう。しかしこの喧嘩、どう見ても高見沢に勝ち目がない。マキコ・マネージャーの方が一枚も二枚も上手なのだ。
「あのね、卑弥呼女王は、高見沢さんが綿密な計画、そして大胆な実行をする能力があると評価したからこそ、ミッションを与えてくれたのよ」
マキコ・マネージャーが今度はちょっと持ち上げてくる。そして口惜しいが、学校の先生のような口振りで後を続ける。
「今からプッツンきて、どうするのよ。じゃあ一緒に作戦を考えましょう、ねっ、高見沢君」
高見沢は「コンチキショー!」と叫びたかった。しかしここはおとなしく、「マキちゃんは、何か良い秘策を持ってるの?」と聞く。しかしマキコ・マネージャーは、なんとか高見沢自身で具体的な行動計画を考えさせようと沈黙している。
だが高見沢はこういう場面では辛抱ができない。その沈黙を破ってほざいてしまうのだ。
「ヨッシャー! そうしたらマキちゃんと一緒に行動しようよ。新幹線でお弁当食べて仲良く東京へ行こうよ。で、泊まるホテルは、どこにする?」
「何言ってんのよ、アンタ! 私は情報部のマネージャーで忙しいのよ。オッサンの相手なんかしてられないっ……チューの!」
マキコ・マネージャーが思いっ切り突っぱねた。そして高見沢をぎゅっと睨み付け、さらに仰るのだ。
「高見沢さんは、いつもそんな無計画のままで、お気楽に生きてきただけなのよ。せめてPDCA(Plan/Do/Check/Action)を回して、問題解決型で行くのか、それとも課題達成型で事を進めるのか、その仕分けぐらいはしてよね、わかってんの?」
もうボロンチョンだ。しかし言われてみたら、確かにそうかも知れない。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊