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笑ミステリー 『女王様からのミッション』

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「やっぱり高見沢さんは、そこいらにいる中年オヤジだったのだわ。もう少し女性に対しての感性レベルを上げなさいよ」
 高見沢はこう指摘され、「じゃあ、一カラットのダイヤモンドは?」と言い直してみた。
「そんなの高価過ぎるでしょ。高見沢さんは人生経験豊富なんだから、その世渡り上手な燻し銀のような感性で、アイデアを絞り出してよ。もう少しよ、女性があっと喜ぶもの、他に何かあるでしょ」
 高見沢は、こんなマキコ・マネージャーの追い上げペースに、しっかりはまり込んでしまった。そしてギュギュッと知恵を絞り出し、声高らかに言い放つ。

「ファイナル・アンサー、それはバラの花」
「大当たり!」
 この忙しい時に、二人はゲームをして遊んでいるとしか思えない。邪馬台国の卑弥呼女王はよくぞこんなハチャメチャな二人に、大事なプロジェクトを担当にさせたものだ。しかし、マキコ・マネージャーは本プロジェクトのリーダーらしくさらに質問を飛ばす。

「高見沢さん、それじゃお土産に、どんなバラが良いと思うの?」
 女性が喜ぶバラ、それは何バラか? 高見沢はこれには自信がある。すぐさま返答する。
「赤いバラはどうかなあ、クレオパトラ(Kleopatra)とかタブー(Taboo)とか、それらはどうだろうか、真っ赤だぜ」
 そしてさらに知恵を絞り、今度は独り言のようにぶつぶつと言葉を連ね出す。
「うーん、赤いバラは恋人へのプレゼントが常識だよな。ちょっとこの場面では合わないかな。そうしたら黄色のバラのソフィアかソレイユ(Soleil)。しかし、ジェラシーの意味があるからなあ、うーん、なかなか難しいよ」
 高見沢は時間に余裕もないのに、こんな思考から抜け出せない。そんな時に、「高見沢さん自身が、今一番興味のあるバラって、何なの?」とマキコ・マネージャーが助け船を出す。高見沢はこんなヒントを得て、反射的にはっと気付くのだ。

「グリーン・アイズの女性に初めて逢う、そんな場面に一番似合うバラ、そうだ、それは……青バラだ!」
「お見事!」
 マキコ・マネージャーからはパチパチパチと大きな拍手。

「青バラには、ブルー・ムーンにブルー・バユー(Blue Bajou)等があるよな。俺が今一番興味を持っているバラ、それはショッキング・ブルーかな」
「そうよ、高見沢さんはやっぱりえらいわ、ショッキング・ブルーの名前が飛び出してくるなんて、まだ知性と感性は消滅していないわね。時間さえかければ、ちゃんと答えを見付ける人なんだよね」
 マキコ・マネージャーは高見沢にそんな励ましをし、今度は眼差しを真剣なものに変える。