笑ミステリー 『女王様からのミッション』
二人は今、コーヒーショップの店内のテーブルに面と向き合って座っている。そして、そこには一触即発の緊張感が走ってる。
マキコ・マネージャーに無理矢理に引っ張ってこられた高見沢、イライラしている。なぜなら時間の余裕がない。
「ちょっとぉ、高見沢さん、その貧乏揺すり、止めてくれない!」
まずその緊張状態を破って、マキコ・マネージャーからきついお叱りの言葉が飛んだ。それはまるで長年連れ添ったカミさんのような言い草。そのせいかどこまでも威嚇的(いかくてき)。
高見沢は長年サラリーマンをやってきた。そのためか、目標さえ与えられれば、ただただ邁進するという単純な行動パターンが身に染み着いている。
今回もまったく同じこと。グリーン・アイズの女性を探し出し、邪馬台国へ連れてこいというミッションが与えられた。そして吉祥寺にいるという情報を受けた。
いつもの行動パターン通り、兎にも角にも早く動かなければならない。そんな焦りがあった。だいたいこの様な場面では、ついつい貧乏揺すりが出てしまうのだ。
「貧乏揺すりは、俺の生活習慣病だよ」
高見沢は愚痴っぽくそう呟いて、「それで、用件は?」と、後は邪魔臭そうに尋ね返した。しかし、さすが邪馬台国・情報部のマネージャー、痛いところを突く。
「高見沢さんは、グリーン・アイズの女性を、吉祥寺から連れて帰ってきたいと思ってるのでしょ。だったら、そのための具体的な作戦は……、何なの?」
高見沢はこんな質問を受けて、「うっ」と言葉を詰まらせてしまった。しかし、喋るしかない。
「そうだなあ、グリーン・アイズの女性に逢ったら、京都へ行きましょうとお願いして、後は一緒に来てもらう、これがマイ・シナリオだよ。これって、ダメかなあ?」
高見沢はマキコ・マネージャーの鋭い質問を受けて、一挙に勢いが萎える。
「高見沢さん、失礼だけど、お歳は幾つ?」
マキコ・マネージャーがまた遠慮のないことを突然聞いてくるものだ。それに対し、高見沢はブスッとなる。
「三十過ぎの六十前だよ、そんなこと知ってるだろうが。今さらそんなことを言わせるなよ」
しかし、マキコ・マネージャーは容赦しない。
「いい、高見沢さんはイケメンの領域から完全に外れてしまっているのよ、アナタはただのオッサンよ。これが紛れもない事実なの。そんなの女性が相手にしてくれると思う? その事をちゃんと認識しているの?」
「うっ、うっ、うっ、うっ、うー」
高見沢は的を得ているだけに何も返せない。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊