笑ミステリー 『女王様からのミッション』
目と目がガチガチと合う。まさにその瞬間の事だった。高見沢のすべての動作が止まってしまう。そのままの状態で、しばらくの時間が流れて行く。そして、高見沢はパンパンと己の頬を思い切り叩き、ただ一言だけ女王に確認する。
「女王様は美しいグリーン・アイズだったのですね」
感動に近い驚き。高見沢にはそれがあるようだ。
卑弥呼女王はそれに気付き、静かに答える。
「邪馬台国の純血種の証は、グリーン・アイズなのです」
そうだったのだ。
卑弥呼女王は明らかに東洋人の姿形をしている。しかし、その瞳の色だけは違っていた。
緑の目。そう、グリーン・アイズだったのだ。しかもそれは……エメラルドより深い色調。
この宇宙に希少にしか存在しない宝石。まるでその価値あるギャラクシー・ジュエリーのように、奥深くキラキラと輝いている。
高見沢はこれでなんとなくすべてが理解でき、また解明できたような気がする。
「そうだったんだ、代々の卑弥呼女王はグリーン・アイズだったのだ。それで二千年もの間、まほろびの日本国の男たちが、その魔力に引き付けられて、祇園の邪馬台国の女王を手に入れたいがために我先にと駆け付け、支えてきたのだ」
そう言えば、高見沢は生涯の中で、今まで二回しかグリーン・アイズに遭遇していない。
一度はメキシコで、テオティワカンの太陽のピラミッドを観光している時、グリーン・アイズを持つ女性を見たことがある。その時、吸い寄せられるように見入ったことを思い出した。
もう一度はアメリカ滞在時に飼っていたパピヨン犬。時々、三十度位の入角、そんな光線の加減でグリーン・アイズが観察された。
しかし、そんな気楽なことを思い巡らしている場合じゃない。卑弥呼女王のように美しく澄んだグリーン・アイズはこの世にはそう存在しないだろう。
「その美しいグリーン・アイズは、どれくらいの確率で出現するものなのですか?」
高見沢は思い切って聞いてみた。それに対し、卑弥呼女王は優しく答えてくれる。
「そうですね、十億分の一ぐらいでしょうか」
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊